【僕の感想】第3回:書籍「小倉昌男 経営学」

「僕の感想」アイキャッチ画像僕の感想

本日の対象作品はこちら↓

小倉昌男 経営学

「クロネコヤマトの宅急便」で有名なヤマト運輸の2代目社長の「小倉昌男」さんの著作です。
Kindleで読みました。(残念ながらUnlimitedでは提供されていません)

「宅急便」という新しいビジネスの立ち上げ・運営を中心としたヤマト運輸の経営方針等が題材にされており、それらを通して小倉さんの考える「経営に必要な考え方とは」が学べます。初版は1999年10月4日発行と20年も前の本なのですが(本記事執筆は2019年です)、個人的にはまったく古臭くなく現代にも通用する考え方が記載されている様に思えました。

本書を読了して強く感じた事は「ロックたれ」という事です。
何故そう感じたか? それは僕にはこの本に描かれている小倉さんの生き方・思想がまさにロックを体現している様に思えたからです。

小倉さんは非常に誠実で倫理観が強い人物であり、自分の考える正義の実現のためにはどの様な権力者にもひるまず自己の信念を貫き通している様に思えます。その具体的なエピソードとして本書では2つの事例が描かれています。

まず最初にいきなり強烈な事例として本書のプロローグに記されているのが、三越の岡田社長の人間性に対する強烈なバッシングと、それに起因する契約の解消です。
宅急便というビジネスが開始されて間もないころ、小倉さんは50年以上に渡り取引を続けていた三越との契約を解消します。その原因は本書に記されている記述によれば「当時の岡田社長の倫理観の欠落がどうにも許せなかったから」とあります。これは本当にロックです。

「売上」や「利益」とは関係の無い次元で「倫理観のない人物は許せない。そんな人物が率いる組織と取引など出来ない」という意思決定をしているわけです。もちろん、そこには「宅急便と言うビジネスが花開きつつあったから」という強かな考えもあったのだとは思いますが、それでも、スケベ心のある人間であれば「多少、人間性に問題がある人物が社長だとしても、大口顧客との契約は維持しておいた方がいいだろう」という下らない発想をしてしまう事もあるかと思います。
小倉さんは、そんな意思決定はしない。「許せない相手」との取引は解消してしまう。非常にカッコいい。この姿勢は素直に憧れます。また、この姿勢は相手が行政であろうと同様に貫かれます。

それが2つ目の事例として第8章に描かれている運輸省との戦いです。小倉氏は宅急便をビジネスとして成り立たせるための障壁となった運輸省に対して裁判や新聞広告等の方法で徹底的に戦いを挑んでいます。行政が相手であろうと「間違っている」と感じた事に対しては、果敢に戦いを挑んでいるのです。

また、本書にはかなり直接的に運輸省の悪口が書かれています。
いくつかの記述を引用すると以下の通りです。

ヤマト運輸は、監督官庁に楯突いてよく平気でしたね、と言う人がいる。別に楯突いた気持ちはない。正しいと思うことをしただけである。あえて言うならば、運輸省がヤマト運輸のやることに楯突いたのである。不当な処置を受けたら裁判所に申し出て是正を求めるのは当然で、変わった事をした意識はまったくない。

小倉昌男 経営学 Kindle版 位置No.2164-2172

役人のせいで、宅急便の全国展開が少なくとも五年は遅れている。規制行政がすでに時代遅れになっていることすら認識できない運輸省の役人の頭の悪さにはあきれるばかりであったが、何より申請事案を五年も六年も放っておいて心の痛まないことのほうが許せなかった。与えられた仕事に最善を尽くすのが職業倫理ではないか。倫理観のひとかけらもない運輸省などない方がいいいのである。

小倉昌男 経営学 Kindle版 位置No.2172

もうね、カッコよすぎる。こんなのシビれない方が嘘でしょ。

と、経営者にとっての精神性に関して(小倉さんはおそらく意識していなかったと思うのですが)本書は「ロックたれ」と強烈に示しています。もちろん、本書で描かれているのはそれだけではありません。

本書は3部構成になっており、それぞれ以下の内容が記載されています。

  • 第1部:宅急便という新しいビジネスが生まれるまでのヤマト運輸と小倉さん自身について
  • 第2部:宅急便という新しいビジネスを実現するために実施した各種戦略について
  • 第3部:小倉さんの考える経営哲学について

個人的には第2部の内容に特に学ぶところが多いと感じました。
小倉さんは「宅急便」というビジネスを実現するために、その事業自体の設計のみならず「ヤマト運輸」という組織の構造自体も大きく改造しています。どうも小倉さんはプロダクトファーストの経営を行っている様に思えます。これは非常に示唆に富む記述だと思います。

新しいプロダクトを開発するためには、それに適した形に全てを変革しなければいけないのでしょう。「既存の組織の形を残したままイノベーションを興したい」などという言説は全て甘っちょろい幻想だと言えると感じました。

この様に本書は少しでも経営に興味のある方にとっては、非常に有益な書籍である様に僕には思えました。ビジネス書としてはかなりおススメの一冊です。僕自身もふらとぴ編集部メンバーとして常に「ロックたれ」という気持ちを忘れずにふらとぴの運営を行っていきたいと、改めて感じました。

以上です。

タイトルとURLをコピーしました