こんにちは。小説「マリオネットの罠」の時代を感じさせない面白さに驚嘆した横道それ夫です。
「マリオネットの罠」は赤川次郎の処女長篇でありミステリー小説の傑作と名高い作品。初版の刊行が1977年でありながら、2020年に読んでも古臭さを感じない秀逸な作品です。
登場人物の行動や設定にやや現実味が欠ける部分があったり、伏線の張り方がやや強引だったりする印象もありましたが、エンターテイメント性が高く、最後まで楽しく読めました。中盤以降のキリキリする緊張感はなんとも言えません。オススメ。
ところで、赤川先生の作品は十数作読んでいますが、先生は魅力的な女性を描くのが本当に上手ですね。彼女たちの行動力や機転のよさには憧れを感じます。
まぁこれは置いといて。
さて、第10回を迎えた【げぇむのよこみち】です。
今回の話題もイースシリーズ。『イースⅧ -Lacrimosa of DANA-』に続き、『イースⅨ -Monstrum NOX-』をプレイした感想を書きました。
「イースⅧ」→「イースⅨ」とほぼ間を置かずにプレイしているゆえに前作との比較が多め。第9回と併せてお読みいただくとより伝わりやすい内容があるかと思います。
ネタバレには配慮しているので、作品未プレイの人でもお読みいただけるはずです。
前回書けばよかったイースシリーズ概要
シリーズのプレイ作品数的には完全に「ニワカ」の横道それ夫ですが、本シリーズについて少しだけ説明をしたいと思います。
その歴史
イースシリーズは日本ファルコムが制作するアクションRPGの金字塔的シリーズです。
PCゲームとして始まった本シリーズの歴史は長く、第1作目の発売は1987年。
アクションRPGの人気シリーズとして名を馳せる「ゼルダの伝説」シリーズとほぼ同い年です。
そもそもゼルダの伝説が登場する背景には、イースシリーズ以前に日本ファルコムが制作したアクションRPG「ザナドゥ」の存在があったとか…。詳しくは存じ上げませんが。
とにかく、アクションRPGを語るうえで日本ファルコムの存在は欠かせないものであり、イースシリーズもまた然りなのであります。
主人公「アドル・クリスティン」
シリーズは一部の外伝作品を除き「アドル・クリスティン」という青年冒険家の記録を辿る、という形式でシリーズを重ねており、彼の冒険の先々で起こる出来事、出会いと別れが描かれています。
なお、ナンバリングとシリーズ時系列は必ずしも一致しているわけではありません。
詳しくはこちらをご覧いただくとよく分かると思います。
一部の登場人物や世界観を同じくしつつも毎作品ごとに完結している、という意味で映画「007」シリーズや「ミッション・インポッシブル」シリーズをイメージすると分かりやすいかもしれませんね。
イースⅨ -Monstrum NOX-
作品概要
2019年9月に発売された本作。
ナンバリングとしてもシリーズ時系列としても最新作にあたり、現在のところPlaystation4版のみ発売されています。
なお、僕がプレイしたのは最新アップデート済みのv1.06。本作はアップデートの有無でかなり評価が変わる可能性があることを予めお伝えしておきます。
タイトルは「いーすないん もんすとるむ・のくす」と読みます。
モンストルムはラテン語で「怪物・化け物」を指し、ノクスは同じくラテン語で「夜」を意味します。どちらも物語の根幹を成すワードとなっております。
本作は「イースⅧ」から約3年後の世界が舞台。アドル24歳の冒険の記録です。
ファンサービス的に過去作に関するワードが登場することはありますが、物語の本筋や主要人物の描写はしっかり本作のみで完結します。前作やその他シリーズ作品をプレイしていなくても特に問題はありません。
ファンサービスを仕込みつつも新規プレイヤーを置いてけぼりにしない老舗ファルコムの妙が光ります。
舞台は「監獄」と「夜」
本作は巨大な監獄のある「バルドゥーク」という都市を舞台に、特殊な能力を使う「怪人(モンストルム)」や「グリムワルドの夜」と呼ばれる現象の謎を解き明かす、という物語が紡がれていきます。
ずっと夜のままストーリーが進むとかではなく、明るい街や広い平原を存分に散策できますが、前作のような「青い空 青い海 耳に響くは風の音」的な爽やか成分は本作では控えめ。厨二成分はマシマシ。
また、本作では「裏切り」や「暗躍」をする明確な敵対勢力がいます。
あくまで少年漫画的な王道展開の中での話なので強烈な鬱展開とかはありません。
主人公が行動した先に誰の幸せも無かった…。助けを求める依頼人こそが諸悪の根源だった…。そんな展開をお望みのアダルトな貴方はウィッチャー3をどうぞ。
ミステリー要素を孕んだ2視点展開が秀逸
本作では主人公アドル以外に「ある人物」の視点でも物語が進行していきます。
この「ある人物」の登場が結構面白くて、「え?どういうこと!?」「でも、さっき確かに…。」といったミステリアスな混乱をプレイヤーにプレゼントしてくれます。
勘のいい人はサッと真相に気づくかもしれませんが、僕は「推理小説の犯人が解決篇までまったく分からないマン」なので、「いったい何が起きているんだ!?」的な感覚が物語に拍車をかけました。
冒頭で唐突にミステリー小説の話題を挙げた伏線がここで回収されましたね(ドヤァ)
本作でも魅力的な登場人物、しかし…
今回仲間になるのは≪異能≫(と書いて「ギフト」と読む)を持つ「怪人」たちと、バルドゥークに住む街の住人達。
前作からキャラクターデザインが一新されていますが、今作のデザインも秀逸。
(アドルの目が若干死んでるんですけどね。この3年間になにがあった…。)
僕のお気に入りは怪人「猛牛」です。(CV:佐倉綾音)
二十歳設定とは思えないセクスィなボイスがイイ!
サブキャラクターも充実しており何かとアドルの冒険をサポートしてくれます。
なのですが…
前作では「漂着した島からの脱出」という共通かつ必然的な目的により、爽やかな関係を築いていた主人公とその仲間たちですが、本作においては「それぞれの思惑による利害の一致」による協力関係や、行動を共にする必然性を感じないキャラクターもチラホラ。仲間が増えていく過程にも若干の強引さやこじつけを感じます。
- (前作)「他にも漂流者がいるかもしれない、探そう!」→ わかる。
- (本作)「私の知り合いが監獄に囚われていてね…チラッ」→ 知らんがな。
≪異能≫によるアクション性の向上
前作からの大きなパワーアップがコレ。
まず、エリアごとに細かくぶつ切りされていた前作セイレン島から一転、バルドゥークの街は全体がほぼシームレスになっています。
「前作:島→今作:街」なので普通に考えるとスケールダウンなのですが、街の周辺や監獄も含めたフィールドは広く、建造物も多いので散策の面白さはアップしています。
本作では序盤から便利なファストトラベルが使えるので必要以上に街をウロウロする必要はないのですが、プレイアブルキャラそれぞれが持つ≪異能≫が街の移動を楽しくしてくれています。
見よ、某ハンターの某念能力みたいなネーミングセンス(・∀・)!!
- 「ヘブンズラン~天空散歩~」
発動時の「ポムポムポムポム…」な効果音が個人的にツボ。
- 「クリムゾンライン~王者の道~」
猛牛さんはこの技名をちゃんと言いません。「なんとかライン!!」
他にもいくつかある≪異能≫はダンジョン攻略でも必要になっており、本作は全編通して三次元的なフィールド把握が必須になりました。高低を活用したフィールドギミックは、アクションRPGとしてのパワーアップを感じます。
結果、前作より複雑な操作を求められる場面がありますが、アクションをサポートする機能(難所への足場追加)や、一部難しめのクエストを「クリアしたことにして先に進む」機能も実装されています。
僕は使用しなかったので使い心地を伝えることはできませんが、「ギミックの難しさで先に進めない」といったストレスに対する配慮がされています。
戦闘は被ダメージ前提のゲームバランス
「基本攻撃」と「スキル」を攻撃の軸に、相手の攻撃に対してタイミングよく回避or防御という「フラッシュムーブ」「フラッシュガード」を防御の軸に立ち回ります。
このシステムは前作時点で確立されており、爽快感と緊張感のバランスが絶妙でした。
本作はその爽快感と緊張感の比率がちょっと変わった感じ。
前作では敵の攻撃にやや大きめの予備動作があり、フラッシュ〇〇を狙いやすいポイントが多くありました。一方、本作においては全体的に敵の予備動作が少なめで、フラッシュ〇〇を狙いづらくなっています。また、画面内に出てくる敵の量が増えており若干の処理落ちが発生することから、フラッシュ〇〇に依存しない立ち回りが求められます。
必然的にダメージを受ける機会も増えているのですが、本作では被ダメージ量が少なめ。回復手段も豊富にあることから、ある程度ダメージ覚悟のアグレッシブな行動を推奨するバランスに調整された印象です。
必殺技の発動に必要なゲージの溜まりも明らかに早く(しかし非戦闘時には勝手に減っていく)、大量の敵と戦う「グリムワルドの夜」における派手さや爽快感はほぼ「イース無双」。
ユー、ストロングなスキルをユーズして、メニーなエネミーにアタックしちゃいなYO!な豪快バランス。
処理落ちはちょっといただけませんが、本作のメインキャラである「怪人」たちの強さや特異さを表現できる爽快感に寄せたゲームバランスは本作とマッチしてますね。
キー配置は使用必須の≪異能≫アクションが各ボタンに割り振られたことで、デフォルトでは一部の機能がオミットされています。(例:ミニマップの拡大縮小)
機能としては存在しており、キーコンフィグで割り振り可能なので、「アクション重視」や「探索重視」など、目的や好みに応じてカスタマイズすることをオススメします。
「某ゲームみたいに操作する指が足りない」とかはないです。ご安心を!(?)
グラフィックは前作(PS4版)からほぼ据え置きか
Playstation4の性能を遺憾なく発揮した高グラフィック…ではありません。
キャラクターのモデリングやアクセサリー等の揺れ、各エフェクトの強化による演出面のパワーアップは感じます。フィールドのシームレス化も転じてグラフィックの向上と言えますが、前作(PS4版)からの劇的なグラフィック向上はそんなに感じません。
しかし、相変わらず作品の魅力を表現するのに十分な水準にあります。
僕は国産RPGはフォトリアル路線ではなく、こういうアニメ的デフォルメ路線を大事にしてほしいなぁと思います。その方が絵的に映える衣装や武器を表現しやすいですし、妙なしがらみにも囚われず「ゲームらしさ」を追求できる気がします。
まとめ
「イースⅧ」に続き『イースⅨ -Monstrum NOX-』も丁寧に作られた傑作です。
アクションRPGやアニメ調グラフィックに極端な拒否反応がある人を除き、多くのゲーマーにオススメできます。Playstation4をお持ちの方は手に取ってみて損はないハズ。
だが。しかし。
前作『イースⅧ -Lacrimosa of DANA-』の完成度が高すぎるんだよなぁ。
アクションRPGとして確実にパワーアップしてるけど、作品全体の満足度では前作超えならず、というのが僕の「イースⅨ」に対する評価。
もし両作とも未プレイであれば、廉価版も発売されている「イースⅧ」の購入をオススメしちゃいます。前作プレイ済みの人は、本作にてイースアクションの進化をお楽しみください!
今日もふらとぴにお越しいただきありがとうございます。ではまた!
「推理小説の犯人が解決篇までまったく分からないマン」な僕が比較的早い段階で真相に辿り着けたのが「真夏の方程式」(著:東野圭吾)です。小説も映画もこれからの季節にオススメ!!いまさらか…。