こんにちは、横道それ夫です。
今回はワンコインで遊べるノベルゲー、『A YEAR OF SPRINGS』を紹介します。
遊んだのはNintendoSwitch版です。
一部シナリオに言及した内容がありますが、ネタバレには至っていない…と思っているので、購入前の参考にもお読みいただるかと思います。
A YEAR OF SPRINGS
概要
NintendoSwitchでは、2021年12月10日にダウンロード専売としてニンテンドーストアで配信が開始されました。その他多くのプラットフォームで展開されていますが、今回は割愛。
ニンテンドーストアでの価格は定価500円。
npckc(公式Twitter・公式HP)というところが開発しています。
日本を拠点に活動しているソロ・デベロッパーとのことです。
インディーズ系作品を遊んでいると、ときどき見かける名前です。PCで発売されたインディーズ系作品を家庭用ハードに移植したりしてる会社ですね。こちらは拠点がスペインとのこと。
A YEAR OF SPRINGSは三人の女友達の物語です。
愛したい、繋がりたい、受け入れてもらいたいという感情をナビゲートするノベルゲーム3部作のコレクションです。one night, hot springsでは不安や緊張感を抱くトランスジェンダーの女性・鈴木ハルが温泉に行きます。
last day of springでは友達想いの元不良・永田エリカがハルのためにスパ旅行を企画します。
spring leaves no flowersでは箱入りの女子大学生・立花愛美が友達や彼氏と楽しい一日を過ごします。
【特徴】
・マルチエンディングのノベルゲーム3作品が1つに
・このコレクションでしか見られない新エピローグ
・柔らかくかわいい絵と穏やかなサウンドトラック
・ミュージックプレイヤーやCGギャラリーなどの素敵な特典も!【注意】
A YEAR OF SPRINGS | My Nintendo Store
この作品には異なるジェンダーやセクシュアリティを持つ人々が直面する問題等のコンテンツが含まれています。
ジャンルはテキストアドベンチャーです。
テキストを読み進め、ところどころ出てくる選択肢を選んで物語の展開や分岐を楽しむ非常にシンプルなゲーム性です。
本当にシンプルなので操作性について言及する必要は無いでしょう。
対応言語とプレイ時間
本編から各種メニューまで日本語に対応しています。
物語の舞台も現代日本なので、日本語ベースで制作されているのかも?
それくらいに違和感のない文章で楽しめます。
なお、キャラクターボイスはありません。
プレイ時間は一通り物語を読み終えるのに約1時間…よりもう少し早かったかもしれません。
そこから攻略情報等なしにコンプリートを目指してプラス数十分で、合計2時間はかかっていないと思います。
情景描写がなく、ほとんどが登場人物のセリフとモノローグで形成されているのでサクサク読み進められた印象です。
本作のいいところ
とてもマジメにマイノリティの問題と向き合うシナリオです。
ノベルゲー(特にギャルゲー)にありがちな冗長すぎる会話や、不自然なまでの仲良し描写がありません。
物語の中心になる女性3名は、それぞれの抱える思いや自身を取り巻く環境について、時に隠し、時に吐き出し、お互いの関係を少しずつ変化させていきます。
その変化は希望も感じさせますが、一方で新たな問題と向き合う必要も生まれていきます。
フィクションの世界であっても、世の中が彼女たちの思い描く理想の世界になることはなく、やはり彼女たちはマイノリティとして生きていくことを強いられるからです。
「私には居場所がない。」という短い言葉に、とてつもない重さを感じさせられました。
可愛らしいイラストで描かれている物語ですが、その中身は社会の中で生きづらさを感じているマイノリティの叫びです。
「百合百合な展開」や「ほのぼの日常系」を期待して読むと打ちのめされますのでご注意を。
本作のちょっとダメなところ
- 鈴木ハル以外の掘り下げが少ない
主要人物について、本作の状況に至るまでの過程が殆ど描かれていません。
その中で「鈴木ハル」については、劇中で察することができる程度の掘り下げがあるのですが、「永田エリカ」と「立花愛美」については若干、描写不足に感じます。
そもそも物語全体に占めるハルの割合が大きいのですが。「友達想いの元不良」や「箱入りの女子大学生」設定を補完するエピソードがもう少しあれば、一層楽しめたかもしれません。
- 「グッドエンド」の罠
本作に収録されている3エピソードのうち、1つ目の『one night, hot springs』にのみ「グッドエンド」が存在します。
ノベルゲーに慣れている人ほど、このグッドエンドに至るのに苦労するのではないでしょうか。
グッド?これはグッドなのか?
- 「マルチエンド」の定義
先述したエピソード1は、短いエピソードでありながら分岐が豊富で中身も濃いです。
一方、残り2つの『last day of spring』『spring leaves no flowers』については、マルチエンドというにはちょっと難アリです。
僕は「マルチエンド」と聞くと、ニンジン・タマネギ・ジャガイモ・お肉という可能性から、カレー・シチュー・肉じゃが等の異なる結果が生まれるようなものをイメージします。
ただ、この2つのエピソードの場合は、カレーを作るという結末に向けて、最後まで作りきるか、野菜を切ったところで止めるか、みたいな分岐になっています。
例えとして伝わったか微妙ですが…。
もともと単体でリリースされていた3作品の総集編らしいので、2作目以降にゲーム性を見直したのかもしれません。
まとめ
これはもっと早くに遊んでおくべきだったなぁ、と感じました。
マイノリティの抱える問題に、「そんなに気にすることかなぁ?」とか「それは仕方ないんじゃないかなぁ…。」とか、冷めた部分のあった僕を目覚めさせてくれたように思います。
本作を遊んだからといって「マイノリティを理解した」とまでは言いませんが、今の世の中が生み出す「生きづらさ」に少しは触れられた気がします。
そんな本作の評価は…
星5つ!!★★★★★!!
嗜好を超えて、多くの人が手に取ってもいい作品だと思います。定価でも買う価値あり!
今日もふらとぴにお越しいただきありがとうございます、ではまた!