【今日の山頭火さん】第45回:6月15日の山頭火さん

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June 15,2023 #45 90 years ago 6月15日の巻 たれかこいこい螢がとびます
『今日の山頭火さん』第45回で利用する画像です
6月15日の山頭火さん

梅雨の晴れ間ですかね。

日記には『晴、草取デー。』とあります。

昭和八年、すでに〇〇デーみたいな言い方をしていたんですね。

なんか、戦後の言葉っぽいですけど。

山頭火さんの日記を読んでいると、時々こうした発見に出くわします。

随分と昔の話のようであり、案外今と変わらなかったり。

たれかこいこい螢がとびます

今、街中に暮らしていると、蛍を見ることは、まずありませんね。

私も、随分長い間見ていないです。

そのせいか、最後に見た蛍のことを憶えています。

日本の南の方、ある島に旅をした時です。

宿の庭に面した、掃きだし窓の外に、小さな数個の光ががふわふわと漂っていました。

少し季節外れだったのと、南の島と蛍がうまく結びつかなかったせいで、見えているのに、頭がうまく反応しませんでした。

しばらくして、やっと蛍だと気づきます。

横で眠る人を起こさないよう、そっと暗い庭に出ました。

私の気配に気づいたのか、ただ風に運ばれたのか。

近づく間もなく、小さな光は、すーっと夜の中に消えていきます。

見えなくなってからも、残像が残っているのか、しばらく見えているような気がして、夜を見つめていました。

次の朝、昨夜の蛍のことを話すと、一緒に観たかったそうで、ふくれられてしまいました。

もう帰る日だったので。

昨夜は数匹だけだったし、次の蛍の季節に、たくさんの蛍が飛び交うような、名所的なところに旅をする約束をして、なだめました。

私が蛍を最後に見たのは、この時の南の島です。

蛍の飛び交う光、山頭火さんも、誰かと一緒に観たかったんでしょうね。

懲りずに、ちょっといい感じに書こうとしましたが、庭では、蚊にかまれて痒いし、宿の人に、夜は蛇に気をつけて、と言われたことを思い出して、慌てて部屋にもどったんですけどね。

瞳に映っていたのは何ですか。

小さな小さな光ですか。そうですか。

小さな淡い影を作っていましたか。そうですか。

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