山頭火さん、長崎市芒塚町を島原半島の方に向けて旅しています。
トンネルをぬけるより塚があつた
松尾芭蕉の弟子、長崎出身の向井去来の句碑を訪ねています。
日記によりますと、山頭火さんが句に詠んでいるトンネルは、日見隧道とのことです。
調べてみますと、現在では高速ができ、新しいトンネルが開通しています。
山頭火さんが訪れた、文化財に指定されている、江戸時代建立の句碑も、高速の建設に伴い移転しています。
今では、古いトンネルを通る人も少なく、ひっそりとしているのではないでしょうか。
トンネル。
なにか、薄気味悪いというか、嫌な予感がするというか。
何なんでしょうあれ……でも、入りたくなるんですよね。
トンネルの向こう側、なにかが起こりそうですし。
国境の長いトンネルを抜けたら雪国だったのは、川端康成さんの小説に出てくる島村さんですね。
トンネルを抜けたら、神様の国で、どえらい目にあったのは、『千と千尋の神隠し』の千尋さんですね。
ずいぶん昔のことですが、私もどこに続いているか分からない、真っ暗なトンネルに入ったことがあります。
冷んやりとした空気のなか、どんどん歩き、反対側にやっと出た。
と思ったら、入った側に戻っていた。
ということがありました。
トンネルを抜けた後、入口も出口も同じような感じだな、と思いながら歩いていたら、自分が来た道を戻っていたことに、ずいぶん歩いてからから気づきました。
行きと帰りだと、同じようだとは思うものの見る向きが逆なので、案外気づかないんです。
目印があっても普通に見落とします。
とても不思議な感じだったのですが、よく考えてみれば、別にオカルトでもなんでもなく、暗いトンネルで、ポケットから鍵を落とした事が原因でした。
落ちた時に、鍵につけていた鈴がチリンと鳴り、その音に驚いて慌てるという情けないことになりました。
鍵を手探りで探す間に、方向を見失い、入った方に向かってしまったようです。
あのまま、トンネルの向こう側に抜けれていたら、どこについたのでしょうか。
妙なところに辿り着くなら、元の地点の方がいいとも言えますが、どこか妙なところに辿り着きたい気もします。
因みに、鉄道や道路のトンネルは入り口と出口が決まっているそうです。
起点に近い方が入り口、新幹線だったら、東京側が入り口です。Wikipediaに書いてありました。
ということは、大阪から東京へ新幹線で移動する時は、いつも出口から入っているということですね。
出口だと知ってしまうとなんか、むずむずするなぁ。
素敵なトンネルですか、そうですか。
どんなトンネルも、抜けて振り返れば、素敵なトンネルです、ちがいますか。
出口が見えませんか、そうですか。
それは、トンネルではなく、穴ではありませんか、ちがいますか。