一九三二年九月廿一日、山頭火さんの其中日記は、この日から始まりました。
書き出しは、『庵居第一日』です。
そんな日の一句
移つてきてお彼岸の花ざかり
引っ越しの荷物運びといえば、私、学生の頃に運送屋さんでバイトをしていたことがあります。
引っ越し専門ではなく、色んなものを運んでいました。
ちょうど、今頃の季節に、嫁入り道具を運んだことがあります。
婚礼道具の輸送は、いつもとは違って大変気を使います。
日頃は、割りと大胆に荷物を扱う先輩もかなり慎重です。
縁起を色々とかつぎますから、忌み言葉にまつわる事は、とくに避けなければなりません。
まず、絶対、荷物に傷をつけられない。
「傷物になる」は最悪です。
慎重に、慎重を重ねて運びます。
変な汗が出まくっていたのを思い出します。
後、その時初めて知ったのが、トラックをバックさせられないんです。
「出戻り」に通じるということで、バック厳禁。
前進あるのみです。only forwardです。
花嫁道具輸送は、とにかく気を使うのですが。
そのかわりと言いますか、荷主さんから我々アルバイトにもご祝儀がでました。
これは、嬉しかったです。変な汗をかいた甲斐があるというものです。
後、それとは別に祝儀袋をいくつか、預かりました。
これは、細い道で、もし対向車と出くわした時、相手の車に道を譲ってもらう時用で、お礼に差し上げるためです。
戦国武将並みに、猪の本能的に、前にしか進まない覚悟です。
さらに、婚礼道具を運んでますよと、周りに分かりやすように、紅白の帯の様なものを、荷台にまきます。リボンをかける様な要領ですかね。
おめでたい感の演出もあるのでしょうが、どちらかというと、最近の「赤ちゃん乗ってます」マークのような効果を、期待しての物だと思います。
しかし、今では、そんなトラックを見ることはほとんどありません。
引っ越し屋さんのトラック、だいたいアルミの箱型荷台になってますものね。
それと、嫁入り道具を親が用意して持たせるということも、少なくなっているでしょうしね。
新婚の二人で家具選びとか、したいですもんね。
ちなみに、山頭火さんは、酒屋の車力(分かりやすく言うと、大八車。今時の人は知らないか大八車。リヤカーみたいな物です)を借りて自分で運んだようです。
荷物は、纏まりましたか、そうですか。
見送らない約束です、ちがいましたか。