【今日の山頭火さん】第57回:12月14日の山頭火さん

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December 14,2023 #57 93 years ago 12月14日の巻 霧、煙、埃をつきぬける
『今日の山頭火さん』第57回で利用する画像です
12月14日の山頭火さん

山頭火さん、前日の大牟田市から二里(約8キロ)移動です。

万田という炭鉱町にいる友人を訪ねています。

霧、煙、埃をつきぬける

今日の句に詠まれている、霧、煙、埃。

この三つ。共通して、どれも視界を遮ります。

視界が遮られると、どんな精神状態になるかちょっと想像してみてください。

視界が遮られると、そりゃ不安になるだろうと、考えるのではないでしょうか。

しかし、実は、まず焦ります。

不安がる前に、いきなり焦るんです。

私は、この中でいうと、霧でほとんど視界がない、という経験があります。

オートバイでとある峠道を走っているときにはまり込みました。

霧の中に突っ込んだというような、感覚は全くなく、気づいたときには、いつの間にか周りは灰色一色です。

ただ焦りました。

道の通常走行ラインをちゃんと走れているのか、

対向車線にはみ出していないか、

逆に、路肩に寄りすぎてはいないか。

センターラインもガードレールも見えないなか、ただ焦るのです。

なら、止まればと思うのですが、いきなり止まると、後ろから追突されるのではと、ブレーキが握れません。

アクセルを戻して、スピードを落とそうとしているのに、スピードが落ちている感じがしません。

今思えば、ただの下り道だったんだろうという話なんですが、その時は、アクセルの調子が悪いのかと、焦りが増すばかりです。

こういう状況で、勇気はまず役に立ちません。

勇気は、前向きな決断力の話です。思考力が物をいいます。

思考のない勇気は、勇気と呼べません。

一か八かの、ギャンブルです。

この状況、前向き危険です。

では、度胸で乗り切るのか。

実はこれも役に立たないと思っています。

度胸は、精神力の問題だとされていて、受け入れる器の大きさの話です。

この状況、受け入れたところで、何も解決しないのです。

この状況、器の大きさ無関係です。

私の場合は、この時、たまたまヘルメットのシールドが曇っているのかも、なんか息苦しいかも、とシールドを開けました。

空気が肌に直接触れます。

その冷たさと、当たる強さで、スピード感を取り戻し、少し冷静になれてよかったと思っています。

バイクに乗っていると、ついもち出しがちな、勇気も度胸も使いませんでした。

少し冷静になったことで、相手から見えなくても、音ならこちらの存在に気づくかもと、ホーンを鳴らしながら走ることにしました。

ホーンを鳴らす事の効果は分かりませんが、視覚以外の感覚器官を使ったことで、余裕ができたのかもしれません。

山頭火さんのように、自分の足で歩き、肌でその空気に直接触れていてこその、つきぬける、だと思います。

乗り物に乗ったり、いろいろな道具を使って、生身の人間の能力を超えた状況にある時、自分のことを、あまり信用しない方がいいと、思っています。

視界が遮られているような時は、特にです。

さもないと、つきぬけるのではなく、何かに、突き当たったり、突き刺さったりします。多分。

いってみますか、そうですか。

つきぬけるはずですか、そうですか。

それ、ただの願望ではありませんか、ちがいますか。

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