【僕の感想】第21回:小説『スローシャッター』(ネタバレ無し)

『僕の感想』第21回のサムネ画像です僕の感想

こんにちは。シャッター大好き、チョッピーです。

本日の対象作品はこちら ↓

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書籍の概要

2020年3月17日に設立された「ひろのぶと株式会社」という新しめの出版社から発行された『全部を賭けない恋がはじまれば』に続く2冊目の書籍。

著者は田所 敦嗣(たどころ・あつし)。彼は普段は水産系商社に勤めるサラリーマンであるらしく、今作が彼の処女作。

著者が note に掲載している作品をリライト・再編集したものを中心とした短編集。

読めば、旅に出たくなる。
人に、会いたくなる。

アラスカ、チリ、ヨーロッパ、ベトナム……
水産会社に勤務し25ヵ国を訪れた男が
仕事の中で出会った人々との交流を描いた紀行エッセイ。
コロナ禍を経たいま、「旅」の本質を問う。

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はじめに注意 – 僕ことチョッピーは「ひろのぶと株式会社」の株主です

最初に注意点をひとつ。

見出しに書いている通りなのだが、僕ことチョッピーは「ひろのぶと株式会社」の株主である。

だから、まぁ、この感想文は「出来るだけ多くの人に『スローシャッター』を買ってもらうこと」を目的に書かれている。

何故か?

だって、この書籍の売れ行き次第で僕への配当の額が決まってくるかもしれないから…。

本記事をご覧の皆様におかれましては、そのような事情を勘案の上、本感想をお読み頂ければ幸いです。

チョッピー
チョッピー

「変なバイアス抜きの感想が読みたいんだけど」という方はAmazonレビューなどをお読み頂ければ助かります。もしくはSNS等で書籍名で検索するとか。

感想

装丁がオシャレ

最初に本の中身についてではなく、その見た目について書いてみたいと思う。

というのも「ひろのぶと株式会社」から発行される書籍は『全部を賭けない恋がはじまれば』もそうだったのだが「プロダクトとしての品質」に強いこだわりを持って作られている様に思えるからだ。

なので、その中身…つまりはコンテンツについてだけではなく、見た目についてもご紹介すべきではないかと思った次第。

と言っても、僕にはデザインについての知識などはない。

だから技術的なお話などはできないのだが…

表紙の画像です
表紙

いや、もう、単純にカッコよくない?

背表紙の画像
背表紙

背表紙もオシャレ。

たとえば表紙が見える形で壁掛け収納などに立てかけてもオシャレだろうし、普通に本棚に並べたとしても趣味の良さが演出できそうだ。

もし仮に文章に全く興味がなかったとしても、お部屋のインテリア雑貨として購入してみても良いのではないかと思う。

というか、その観点で考えるとむしろ1,980円という値段設定は非常にお買い得なのではないだろうか。

チョッピー
チョッピー

オシャレなインテリア雑貨って8,000円とかしたりしますし。

読んでみた

いよいよ中身についての感想を書く。

書く…のだが……。

いやぁ…感想を書くのが難しいなぁ。

チョッピー
チョッピー

なぜ…。まさか、面白くない…とか?

いや、そんな事はない。

そんな事はないのだけれど…面白さの種類がなかなか伝えにくいタイプのモノであるような気がしていて…。

というか、そもそもこの本を「面白さ」という軸で評価するのが間違っているような気もする。

この本には全20篇の短編が納められており、そこでは主に水産系商社の業務としての海外出張中に筆者が出会った人々との交流が描かれている。

だから、この本に納められている各短編は、そもそもがとても不思議なコンセプトの作品になっている。…気がする。

というのも、この本の各編で描かれている旅は、本来、ビジネスの遂行が主目的であるハズのモノなのだ。だって、業務としての海外出張なのだから。

なのに、紀行文としてはそこに重きが置かれていないのである。

そもそも訪れた国でのビジネス上の目的も、その成果もわからない場合が多い。

既存商品の改良なのか? 新商品の仕入れなのか? 成功したのか? 失敗したのか? 明確にされない場合がほとんどだ。(明確にされている場合もある)

さらに水産系商社におけるビジネス上での出張であるため、ワクワクするような未踏の大地での大冒険や、珍しい自然・危険な動物との邂逅やバトルなども(基本的には)描かれていない。水産系商社に勤める労働者は、そんな場所で、そんな仕事をしないからだ。

もちろんSFでも異世界転生でもないため、悪の帝国との頭脳戦やハーレム状態でのえちえち描写などもない。ビルの爆発や人体の四散やモンスターの誕生や強盗・強姦・殺人・薬物乱用のような衝撃的で煽情的な描写があるわけでもない。

要するにこの本の中にはビジネス小説的な面白さも無ければ、一般的な紀行文的な面白さも、ハリウッド映画的な面白さも、あるいは少年漫画的な面白さも無いのである。

では、この本の中には何があるのか。

それは前述した通り「人々との交流」である。

それも長期的なモノではない。期間としてはとても短い。ほんの一瞬の交流だ。

だって、出張期間中の交流だから。

でも、その一瞬の中に、かけがえのない煌めきがある。

この煌めきは、全ての人が手に出来るモノではないと思う。

海外出張の機会が全ての人にあるわけではないから?

それもある。

ただ、仮に海外出張の機会が全ての人にあったとしても、この本に描かれている煌めきを、誰しもが手に出来るわけではない。

労働者にとっての仕事とは、基本的に辛く厳しく、にもかかわらず何の価値も生み出さないモノだ。

その中で交流する人々との間にポジティブな何かが生まれる事なんて、滅多にある事ではない。

むしろ、

チョッピー
チョッピー

ビジネス上の利害関係者となんて、必要最低限しかコミュニケーションしたくない!

という気持ちになる事の方が多い。…のではないかと個人的には感じている。

少なくとも、僕の場合はそうだ。

僕にとってのビジネスとは四面楚歌の戦争であり、職場は戦場。同僚は基本的に全て敵。生き馬の目を抜きながら、顧客から可能な限り多くの金銭を取り立て、最大限に私腹を肥やす。それがビジネスだ。

少なくとも僕は今まで、そんな世界ばかりを経験してきた。

だがしかし、それでも、99%の怒りと諦めと憎悪の中で、1%くらいは煌めきがなかったわけではない。

25時の地下鉄の中で、たまたま同じタイミングで乗り合わせた同僚と「もう本当に死にそうだ」と語り合った数分間。

訳の分からない顧客要望を、どうにかこうにか特急で対応している中で、ふいに感じた一体感。

その1年後に上司の命により自らの手で契約を打ち切る事になるパートナーたちと、和気あいあいと楽しんだ飲み会。その後のカラオケ。

そんな貴重でかけがえのない煌めきを得る機会も、仕事には確かにある。

この本には、常人であれば何度も得るのは難しいであろう、そんな稀有な経験が、信じられないくらい多く描かれている。

しかも、読者はそれを「自分事」として追体験できるようになっている。ハードボイルドと評するほどではないけれど、筆者の心情描写が最低限に抑えられている文章になっているからだ。

この本において、筆者はカメラのレンズのような役割を果たしている。

読者はそれを通して、一瞬の交流の中に生まれる煌めきを感じ取れる。

本のタイトルは『スローシャッター』。

時間の流れを、1枚の写真の中に描き切る技法。

この本に納められた20篇は、どれも、美しい写真である。

誰におススメで、どんなシーンで読むのがいいのか

エンタメ的面白さではなく、じんわりとした人間的な暖かみを感じ取りたい方におススメです。

装丁もオシャレですのでインテリアグッズとしてもおススメできます。

また、この本を読む際には出来るだけ上質な空間を作り上げる事を意識した方が良いでしょう。

具体的にはジャズなどのBGMを流しながら、紅茶と共にお読み頂く…そんな優雅な時間にピッタリの書籍です。

チョッピー
チョッピー

僕は実際にその環境で読みました。

最後にボソッと

作中にたまに挟まれている写真のうち、人物が映っているモノはボカシ加工などが施されていた方が良かった気がする。それこそスローシャッターで撮ったものにするとか。

というのも、文章は可能な限り心情描写等を少なくしているのだが、写真はそれとは逆にカチッと明確に「筆者の存在」を描いているように思えたからだ。つまり、それにより「読者の追体験感」が少し損なわれる。

…ような気がした。

まとめ

というわけでこちらの書籍、発行元の株主としても、そのような事情を抜きにしても文句なしにおススメできる一冊だ。

リアルの書店でも Amazon でも「ひろのぶと株式会社」のオフィシャルショップでも買える。

お好みの方法で是非、お買い求めください。

チョッピー
チョッピー

以上です。

※編集部注:「ひろのぶと株式会社」の株主なのはチョッピー個人であり、『ふらとぴ』および、その運営会社である株式会社Egeneは株主ではありません。

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