こんにちは。『マリア様がみてる』で薔薇の名前を知りました、横道それ夫です。
さて、今回は海外産インディーズ系ビジュアルノベル『Blackberry Honey ~メイド物語~』を紹介します。
ストーリーのネタバレはありません。ただしクリア後に解放される一部コンテンツについて言及している箇所があります。
なお、本記事の内容はPlaystation4版に準拠します。
Blackberry Honey ~メイド物語~
概要
2017年にSteam版がリリースされ、2022年2月にNintendoSwitch、Playstation4・5、XboxSeriesX|Sでも発売されました。どのプラットフォームも価格は1,300円前後です。
ebi-hime(ご本人Twitter)さんという方がシナリオを書かれています。
ジャンルは「ビジュアルノベル」。そして、百合要素※がふんだんに盛り込まれています。
※「百合」については様々な解釈があると思いますが、本記事では「女性同士の恋愛的要素」の意とご理解ください。
家庭用ゲーム機版は「CERO:C」なので表現については比較的マイルド。Steam版は興味があるなら調べてね。
さて、少し長いですが、Steamのストアページに公式の丁寧な概要が記載されているので引用します。
19世紀半ばのイングランドを舞台にした、このブラックベリーハニーは、メイドさん、音楽周り、そして予期せぬロマンスなどの要素が含まれる物語です。
この物語は、我らがヒロイン、ロリーナ・ウォーが、ハートウェルの荘厳なお屋敷でメイドとして働いていたところを解雇されたことから始まります。リバプールに残してきた家族を養うために、あまりにも突然の解雇についての心無い噂話が彼女の周りに渦巻く中、ロリーナは職に就ける新たな場所を求めてブライのお屋敷へと導かれました。
ロリーナは休むことがほとんどできない環境で1日14時間働くことを余儀なくされ、先輩メイドや、そしてとても気恥ずかしくなることに、レナード家の12歳の令嬢であるコンスタンス嬢に粗末に扱われていました。
ロリーナと口を聞いてくれるメイド達の一人にミステリアスな雰囲気をまとうタオファというメイドがいました――しかし、ロリーナはタオファとは関わり合いになるつもりはありませんでした。その地位の低さにも関わらず、タオファは自分だけの寝室を持っており、他の使用人と一緒に教会に行くことはなく、めったに他人と交流することがありませんでした。彼女の独特な肌の色、目、名前も相まって、猫を想わせるほどのその孤高ぶりは、彼女が魔女であるかもしれないというたくさんの噂をシュロップシャーの片隅で引き起こしていました。
ロリーナは、タオファとは距離を置いておくべきだと思い、必死になってタオファを遠ざけました……しかし、それらすべての噂にはもしかすると少しばかりの真実があったのかもしれません。なぜならば、彼女はすぐにその女性の魅力の術中にいることを自覚するからです。
・テキスト量は英語換算で10万語ほどになります。
・読了目安時間は7-10時間ほどです。
・可愛らしいレズビアン・ラブストーリーです。
・選択肢・ルート分岐なしの一本道のストーリーです。
・鮮明な背景美術とCGが含まれています。
・1080pに対応しています。
・18曲のオリジナル楽曲が含まれています。
・とてもロングで、フリル満載のドレス類が含まれています。
・ヴィクトリア朝のメイドさん達が含まれています(!!!)。
Blackberry Honey | Steam
「テキストは英語換算で~」とありますが、本作は日本語に対応しています。
キャラクターボイスはなし。そして、事前に知っておくべきなのが「選択肢・ルート分岐なしの一本道のストーリー」であること。
つまりプレイヤーとしてゲームに介入できる部分はなく、まさに「ビジュアルノベル」です。
いいところ
- クセは強いが魅力のある文章
本作は英語原文を有志の方が翻訳されたようです。(Steamレビュー内に記載あり)
なのでこれが原文の特徴なのか、翻訳者の特徴なのかは定かではありませんが、結構クセのある文章で綴られています。
一言で言うと「同時通訳みたいな文章」です。「私は映画に行きました。親しい友人とです。」のような感じ。
なので、最初は読みづらさを感じる方も多いかもしれません。僕もそうでした。
しかし、この表現は作品全体の雰囲気と非常にマッチしています。
英国文化特有の皮肉の応酬だったり、静かだけど情熱的な愛の語らいだったり、それらはこの「持って回ったような言い方」によって一層盛り上がりを見せているように感じます。
言葉選びは丁寧ですし、理解できない表現もほとんどありません。
いつの間にか引き込まれる文章です。
- 味のある名脇役たち
本作の主役は「ロリーナ」と「タオファ」の二人。もちろん彼女たちは非常に魅力的に描かれていますが、それを彩る脇役たちも十分な存在感があります。
ちなみに、脇役は「いい人」「良き理解者」も多いのですが、存在感がある人物は「嫌な奴」が多いです。しかし、本作においてはそれが大事。
特にお気に入りなのが、彼女たちの雇い主の娘にあたる「コンスタンス嬢」です。
本当に、若干12歳にしてどうすればそこまで残酷になれるのか…というくらい強烈なキャラクターに描かれていますが、その背景にはいろいろと感じ取れるものもあり。
「ロリーナ」の世界において「ムチ」の役割を担っている彼女のような存在があるからこそ、「アメ」としての「タオファ」が一層輝くと言っても過言ではないでしょう。
コンスタンス嬢、本作にルート分岐がないのが悔やまれるくらい魅力的です。
- 一級品のBGM
そもそもインディーズ作品としては収録されている楽曲数が多く、登場人物や場面の変化に合わせて巧みに音楽が使い分けられています。
そして、そのどれもが非常に秀逸で素晴らしいです。
サントラあったら買うのになぁ…と思ったら、ありました。
買います。
また、オリジナルBGM以外にクラシック音楽※もいくつか登場しています。※物語の舞台が19世紀半ばなので、劇中ではクラシックではないですが
それらの使われ方も、これまた一級品。
シナリオ担当と楽曲担当の作品解釈が見事にマッチしており、本作のBGM関係は手放しに絶賛していいレベルです。
- クリア後の要素の充実ぶり
多くのノベル系作品に違わず、本作もクリア後にビジュアルや音楽を楽しめるギャラリーモードが解放されます。
その充実度がすごい。
シナリオ執筆時のエピソードや、BGMの解説、背景作成用資料の開示など、制作者の作品にかける思いを感じ取れる良質コンテンツが目白押しです。
作品への理解度がさらに深まりますし、ボツ案を採用した番外編を読みたい気持ちにもなりました。
クリア後にはこれらを鑑賞をすることを強くお勧めします。
ちょっとダメなところ
正直、ほとんどありません。
本作の特性上、ゲームシステムにおける不満は出づらいので、単純に読み物として「合う」「合わない」くらいかなぁと思います。
そのなかで強いて挙げるとすれば…
- ビジュアルや文章から年齢がイメージしづらい
年齢について言及されない人物が何名います。
「アンタは若いんだから」とか「年上の友人が」みたいな文章が出てくるのですが、ビジュアル的には同年齢くらいにしか見えず、少し混乱させられる箇所があります。
とはいえ登場人物の関係性が理解できなくなるほどではないので、それほどマイナスということもありません。
- ギャラリーモードでカーソルの位置が分かりにくい
「いいところ」で挙げたギャラリーモードを鑑賞する際に、現在どの項目にカーソルがあるのか非常に分かりにくいです。
特にスクロールバーになかなか辿り着けず、制作エピソードを読むのに苦戦しました。
それくらいです。
まとめ
「読了目安時間は7~10時間」とありましたが、僕はその半分くらいの時間で読み終わりました。
読み始めた当初は、クセの強い文章に少々ひるまされましたが、気づけば一文一文噛みしめるように読んでいました。
何となく購入した本作ですが、想像以上の満足度!
本作の評価は…
星5つ!!★★★★★!!!
陰鬱と甘美がごちゃ混ぜになった、主人公「ロリーナ」の世界がどこに至るのか、一冊の文芸書を読む感覚でプレイしてみると良いかと思います。オススメできる名作です!!
後日談や番外編の展開を熱望しています!!!
今日もふらとぴにお越しいただきありがとうございます。ではまた!