はじめまして。このたびふらとぴクリエイターに就任しました、ぢーこと申します。
ライター修行のつもりで参加させていただいたのですが、どういうわけだか「さをり織り」を販売するネットショップを開設することになりました。
その話をみなさんに聞いてほしくて原稿を書いたのですが、どうも一人で語っていると普段の調子が出ないのです。困っていたら、チョッピーさんに「ぢーこさんがぢーこさんにインタビューする形なら書けるんじゃないですか?」とアドバイスを頂き、書いてみたらするする書けました。
根っからインタビュー好きな自分を発見しました。が、これだと読んでる方が混乱しそうなので、インタビュアー・ぢーこは「--」ではじまるセリフ、インタビューされる人・ぢーこは「かぎかっこ」のセリフで区別することにしました。基本的に同一人物です。
――こんばんはー。
「はい、こんばんは。」
――はじめまして、ふらとぴクリエイターのぢーこさんですよね?
「そうです、はじめまして。よろしくお願いします」
――えーと、今日はまず、どうしてぢーこさんがふらとぴクリエイターになったのかっていうその経緯から聞きたいんですが。
「なりたいと思ったからです!」
――明快ですね。明快ですが、さすがにもう少しご説明頂けませんか?
「えっと、2020年の年末に『ひろチョピ』って連載があったじゃないですか?」
――はい。
「それを読んで、面白かったなー、私こういうインタビューライターになりたくて勉強してきたんだよな、仕事くれないかな、と思ったんです」
――ほうほう。
「で、田中泰延さんに『仕事ください』ってDMはさすがに送れなくて。チョッピーさんのTwitterのプロフィールを読んだら『ふらとぴクリエイター募集中!』って書いてあったので、こっちなら送っても大丈夫かなと思って」
――まさかの消去法?!
「消去法っていうか、募集中って書いてなかったら、たぶん、チョッピーさんにも送ってないですよ、小心者なので」
――それで、どうなりました?
「わりとすぐにお返事を頂きました。そんなこと言ってくる人は初めてだったようで、説明資料が整ってないからちょっと待ってとか、そういうまじめなお返事だったような気がします。あと、お金は出せないんだけどそれでもいいですか?って書いてありました」
――ショックじゃなかったですか?
「いえ、予想はしてました。ひろチョピを読んでいたので、儲かって無さそうな、というか明日にもヤバそうな感じはひしひし伝わってましたし。仕事は欲しかったんですが、見習い期間中は無料でも全然かまわなかったんです。使い物になるかどうかわからないライターの卵にいきなりお金は払えないなと私でも思いますから」
――経営がプラスに転じたら、その時は堂々ともらえばいいと?
「まあ、そうです。その時に、ライターのひよこぐらいに成長していたら、頂こうと思っていました。でもチョッピーさんの話を伺っていると、私がひよこになるのと会社がつぶれるのとどっちが先か、みたいな感じなのかと思って、これはもしかすると自分で仕事を作らないといけないんじゃないかと思いました」
――仕事を作るとは?
「具体的には、この図を見てもらえればわかるように、チョッピーさんのやってるEgeneという会社は、ECサイトの導入サポートと企業の協賛金で成り立つ会社なので、じゃあ、ECサイトをこれから作りたいと思っている障害福祉施設を開拓してきたらいいんだなと思いました」
――つまり、営業に行くってことですか?
「そうですね」
――ぢーこさん、営業のご経験は?
「まったくありません。皆無です。できれば人と話さずに生きていきたい人間です」
――え? それでいきなり営業をやろうと思った?
「はい。障害福祉施設に興味もあったんです。私、ライターになろうと思う前はずっと子育て支援をやってまして。未就園のちびっこを外に連れ出して遊ぶってことをやってたんです」
――未就園っていうと、何歳ぐらい?
「親子の活動は年齢制限なしで下は0歳から。子どもだけのお預かりは2歳から3歳まででした」
――いちばん大変な時期じゃないですか?
「そうでもないです。確かに大変な時期ではありますが、親ではないちょうどよい距離間でとにかくやりたいということを一緒にやってみて、できてもできなくても可愛がり倒していましたので、子どもたちも私たちスタッフも平和で楽しい活動でした」
――それで、その活動と障害福祉施設とどう関係が?
「あ、そうですよね、わかんないですよね。えっと、野外の子育て支援で、誰でも来てOKっていう活動をしていると、室内であぶれる子が来ることがあったんです。あぶれる、っていうか、室内にいられないっていう感じですかね」
――それはどうしていられないんですか?
「いろいろです。感覚の過敏があって、子どもの泣き声や騒ぐ声がどうやっても耐えられなくてパニックになって入れないとか、逆に人との距離感がよくわからなくて誰かれ構わずべたべた触りに行ってトラブルになっちゃうとか、ジャイアン過ぎて周りにドン引きされてお母さんがいたたまれなくてそういうところに行けなくなるとか」
――それはしつけの問題ではなく?
「全然違います。しつけは関係なくて、生まれながらにそういう特性を持った人なんです。2,3歳だとまだ小さいので、診断が下りてないことも多かったですけど、いわゆる発達障害とか自閉症とか、そういう傾向のあるお子さんが来ることがあったんですね」
――それで?
「それで、そういう子たちがどうしたら過ごしやすくなるのかなと思って、発達のこととか伝え方のこととか勉強しました。凝り性なので、大量に本を読んだり研修を受けに行ったりして、講座が開けるくらいになりました。で、そういう子を育てているお母さんたちともつながりが徐々にできてきて、だんだん活動を続けているうちに子どもの年齢も上がっていくわけです」
――そうですね、赤ちゃんから幼児を経てお兄ちゃん、お姉ちゃんになっていきますもんね。
「ですね。で、この子たちは小学校に行き中学校に行き、やがて社会に出て働くんだろうなと思ったときに、普通に会社とかで働けない人はどうなるのかなとふと思ったんです。それまでずっと小さい子だけ相手にしてきたので大人になったら、この子たちがどんなところでどんな風に困るのか、どんな社会資源が使えるのか全く知らなくて」
――確かに社会的にはあまり知られていない気はしますね。
「はい。放課後等デイサービスを使えるのは18歳までだったかな、その後も人生は続いていくのに、どう過ごしてるんだろう、と思ったんですね。そしたら、やまゆり園の事件があって。私、当時は相模原に住んでいたので地元で起きた事件だったのもあって相当ショックを受けました。私と外で遊ぶ活動に来る子たちは、障害の程度としては重度ではなかったと思うんですが、それでもおしゃべりができない子とかいましたから。自分の名前が言えないと殺されちゃうんだ? 言葉にできないだけで頭の中ではいろんなことを考えているかもしれないのに…と思いました」
――悲惨な事件でしたよね。
「はい。その辺りから、大人になったこの子たちが利用する施設を見てみたいなとちょっと思っていたんです。だから、Egeneの営業として堂々と施設に行けるじゃん、と思いました」
――そんな目論見があったんですね。金目当てなだけかと思ったら。
「失礼な。それで、チョッピーさんにお願いして、Egeneの名刺もつくってもらったんです」
――名刺はもう使いましたか?
「いえ、まだ。私、去年の11月から夫の転勤で福井県の住人になったんです。それで、地元の障害福祉施設のこととか何も知らなかったので、ネットで調べて、とりあえず見学に行こうと思って、名刺が届く前にあちこち行ってみたんです」
――ほう! どうでした?
「規模もやってることも様々で、いろんな施設がありました。駅前の『手芸ショップ』だと思っていたところが、実は作業所で驚いたり、施設はどこでも販売できるものを作っているのかと思ったら、お掃除の労働力の派遣とか、お弁当を作ってほかの施設に配達する作業をしているところとか、作業内容もいろいろでした。チェックリストを作って、ここはサイトが導入できそう、ここは無理そう、と業務や規模で分類したりしてました」
――やるじゃないですか!
「そうなんですよ。で、市のはずれの山の方に、市内で一番規模が大きくて『さをり織り』というのをやってる施設があったんですね」
――はいはい。
「ここには私も入れていただけなかったんですよ。今はコロナのせいもあって保護者ですら入れなかったんですね。保護者っていう言い方も変ですね。もう成人した方がご利用になる施設ですから。親族とでもいうのでしょうか。 」
――アポなしで行ったんですか?
「はい、突撃で」
――だからじゃないですか?
「そうかもしれません。バイクに乗ったおばちゃんが、雪の降る日に雪まみれの雪中行軍みたいな風体で、アポも身元が分かる名刺も持たずにいきなりやってきて会ってくれる方がどうかしてますね」
――そうですよ。名刺が来るまで待てばよかったのに。
「いやー、でもほかの施設は、みんな普通に会えたんですよ?」
――それは買い物客を装ったからでは?
「装ってないです、ちゃんと買い物しましたから。マスクとクッキーを買いました。本物の買い物客です」
――………。
「で、さをり織りの施設も、さをりを見せてくださいって言えば入れてくれるかなと思ったら、そこはダメだったんです。でも、規模が一番大きいし、建物も新しいし、ここならサイトを導入してくれそうだよな、どう営業しようかなと思ってたんですよ」
――はい。
「そしたらですね。その次の次の日だったかな。私、冬の間に運動不足になりそうだなと思って、ジムに行こうと決めたんですね。それで近所のメディカルフィットネスジムっていうのに通い始めたんですよ。そしたら、そこにいたんです」
――なにが?
「なにが、じゃなくて、だれが、でしょう? さをり織りの施設に通っている方がですよ」
――またまたぁ。そんなうまい話が、そんなすごいタイミングで来るわけないじゃないですか。
「来たんだから仕方ないですよね。お母さんも付き添われていらっしゃいました。お母さんがおっしゃるには、お嬢様が施設でさをり織りを覚えてから、家でもやりたがるので機織り機を買ったら、ずーっと座って機織りしてて太っちゃったので、ダイエットのために通ってるんだ、って」
――なるほど、ステイホームもありましたしねえ。
「そうなんですよ。通い始めて6キロ落としたって言ってましたから大したもんです。私は二か月通って全く変わりませんから。で、そのお母さんがおしゃべり好きな陽気な方で、あれこれ話しかけてくれて仲良くなったんです」
――ほう。
「で、その方が、娘さんが家で織ってる布が大量に出るので、知人に配ってるんだっていうので、私も欲しいって言って、いただくことになったんですよ。」
――案外図々しいですね。小心者とか言っておきながら。
「だって、そのさをり布がすごくきれいだったんですよ。お母さんが長Tシャツの胸ポケットに加工してつけてたんですが、カラフルでかわいくて」
――それでどうなったんですか?
「次の日にジムで待ち合わせて、ご自宅まで布を見せてもらいに行きました。小型犬がいてずーっと不審者だと思われて吠えられました」
――ずうずうしいからばちが当たったんですよ。
「なんか言いました?」
――いえ。それで?
「布を二枚選んで買わせていただきました。これはただじゃもらえないなっていう美しさだったので。そしたら、『お金なんて今まで誰からももらったことないから受け取れない』って頑なに固辞するので、『いや、これ絶対売れます! 何なら私がネットで売ります!』って話になって」
――展開はやっ。それちょっと盛ってるでしょ?
「重ねて失礼な。全部本当ですよ。とりあえずその日は、お金を受け取ってもらって、自分のポケットを作るための布をゲットして帰りました。その時作ったのがこれです」
――おお!
「で、調子に乗って、このポケットをSNSで見せびらかしまくったら、いいなーっていう人がわりといて、これはマジで売れるんじゃないか?と思いました」
――単純ですね。
「そうです。それが唯一の美点です。で、絶対売れるからってお母さんを口説き落として、布を原価で買い取って、一週間くらいでネットショップを開きました。利益が出たら分けましょうってことで、とりあえず糸代だけで引き取らせていただいたんです。仕入れ値1万6千円くらいでした」
――それは何というか。いきなり、でかい賭けに出ましたね。
「ですねー。でも、売れると思ったし、頑張って売ればいいわけだし。そして実際に初月は3万を超える売り上げが出たんです。純利益で1万円ちょっと」
――やるなあ。
「でしょ? でもそれは、ビギナーズラックだったと思ってます。特に苦労した記憶もなく売れてしまったので。次の月からは苦戦してます。もっとハンドメイドが好きな人たちに響くような、それでいてお手軽に作れるもののアイデアをセットにして売らないとダメなんだと思うんですけど、これがなかなか思いつけないんですよね」
――そりゃ、あなた家庭科2でしょ? お裁縫の世界で生きてきてないですからねえ。
「そうなんですよ。だから、これから大変だろうなって思ってます。商売ってむつかしい」
――あれ?
「はい?」
――ぢーこさん?
「なんでしょう?」
――これって最初はライターになりたくて、ふらとぴに応募したっていう話じゃなかったでしたっけ?
「そうでしたねえ。なんだか遠い昔のことのように感じます」
――感じます…じゃねえよ。ライター志望がなんだって、ネットショップの店長やってるんですか?
「うーん、なんででしょうねえ。営業に行くために、施設のユーザーであるお母さんに間をつないでもらおうと思っていたのに、それも忘れてました」
――あなたの人生って、一言でいうと。
「言うと?」
――行き当たりばったり。
「そうですねー。でも結果としてその経験をこうして書いているわけですから、ライター志望も叶ってるとは言えませんか?」
――てことは何ですか、これからネットショップの低迷動向をここで報告されるんですか?
「なんで低迷するって決めつけてるのかわかりませんが、そうですよ、そのつもりです」
――誰に向けて書くおつもりですか?
「誰でしょうねえ。でも、ネットショップのオーナーになりたい人にはきっと役に立つんじゃないかと」
――どうでしょうねえ。役に立てるといいですよねえ。
「三度失礼が発動しましたね。じゃあ、連載が終わった時、役に立ったって声が一件でもあったら、焼き肉おごってくださいよ」
――よーしわかった。その代わり、一件も来なかったらぢーこさんが焼き肉おごってくださいね。
「契約成立ですね。ここに焼き肉大戦の開戦を宣言します」
――『なんだこのタイトル?』って思ってたら、そこにつながるのか!?
「はい。おあとがよろしいようで」
ぢーこ運営ECサイト:コースタ814
コースタ814は、もともと仕入れている数が少ないので、月末が近づくと、在庫がないことがよくあります。申し訳ありませんが、そんな時は布を見るだけでお楽しみください。