またしてもご無沙汰しております、ど素人店長ぢーこです。
と言っても、ネットショップの方は、相変わらず開店休業状態です。
近況
Sさんは、作品を「美しく」織り上げることより、「早く」織り上げることを第一に考えるようになられたみたいで、複数本まとめて横糸を織り込むようになり、厚みも増して幅もどんどん狭くなっているのだそうです。
編み物をされる方ならわかると思いますが、極太の毛糸を使うほど、作品を作る時間は短縮されます。
Sさんのさをりも、薄くて繊細な布から、厚みのある固い布に変わってきました。
「厚みがあって細いなら、首から下げる携帯ストラップや、カメラのストラップになりませんか?」
とお母さまに聞いてみたのですが
「私も工夫してみたんやけど、どうやっても売れるようなものにはならんなあ」
と、言っていらっしゃいました。
(Sさんのお母さまは、洋裁がお得意で、ご自身でもよく服を作られていらっしゃるのです)
前回の動画を再掲しますが、こんな感じの布です。
確かにごわごわ感があるのですが、こんなふうに組み合わせて、タペストリーなどの作品にすると味があるんですよねえ。
ただ、これを再現しようと思うと、大量の布が必要になるので、お値段もそれなりになることは間違いありません。
それでもほしい方がいらっしゃればご連絡ください。
実物はもっと美しいですよ。
さをりの試作品をプロにお願いして作ってもらった
以前、Sさんが、まだ幅広の布を織られていた頃、プロの手芸作家さんである佐野幸子先生にお願いして、Sさんのさをりでどんなものが作れるか、実際に試作してもらったことがありました。
先生は、東京都小金井市で「Witch’s room」という「洋服お直し・リメイクや、初心者向けのてしごと教室」を開催されていらっしゃいます。
さすがプロ!という見事なアイデアの作品がいくつも送られてきて、その手仕事の見事さにうっとりしたものでした。
こちらの作品は、ストールを筒状のさをりの中に通して使うので、冬は厚みが増す分、とてもあったかいのです。
しかも、このバイヤス部分の網目が信じられないくらい美しくて、さすが長年培われた技術は、素人仕事とは全然違うなあと感動したものでした。
実際に、ストールを通して使うとこうなります。
ね。めっちゃかわいい。
ほかにも、替え襟、というアイデアも頂きました。
これも、シンプルな服を一気に華やいだものにしてくれて、可愛いなあと思うのですが、Sさんには、もうこの幅の布が織れません。
さてさて、どうしたものでしょう。
2年ぶりの対面販売再開
などと言って嘆いていても仕方ないので、今手元にある布の使い道は追って考えるとして、今回はSさんが通っていらっしゃる「就労継続支援B型事業所」の、イベントの様子をお伝えしてみようと思います。
さる9月17日土曜日、敦賀の駅ビルの一画で、4つの福祉事業所が合同でイベントを行いました。
それが、こちらの「福祉の手作りマルシェ」。
私も知らなかったのですが、「就労継続支援B型事業所」には、「こういう仕事をしなさい」という決まりがあるわけではなく、仕事の内容は各事業所に任されているのだそうです。
だから、事業所によって、もの作りをするところ、単純作業を請け負うところ、農作業を行うところなど、本当にいろいろです。
就労継続支援B型事業所での作業内容は、事業所ごとで大きく異なります
主な作業内容の一例をあげると、下記の通りです。
●衣類のクリーニング
●パンやお菓子などの製造
●農作業
●ミシン作業や手工芸
●清掃作業
●袋詰めや値札付け
●簡単なパソコン入力作業
●製品の梱包作業、発送作業就労継続支援B型事業所での目的は、工賃をもらうことだけでなく、サポートを受けながら、仕事で必要な能力・スキルを身につけていく就労訓練の側面もあります。
就労継続支援B型とは?B型事業所や仕事内容・工賃(給料)についても解説|LITALICOワークス
敦賀やその近隣からは、さをりを使った手芸品を作っている事業所(Sさんが通っていらっしゃるところです)のほかに、食品を作っていらっしゃる事業所さんが3か所出展されていました。
コロナ禍で対面販売の機会が制限されていたこともあり、さをりの展示販売は実に2年ぶりとのことでした。
駅から駐車場に向かう通路の途中にお店を広げていたこともあり、電車がつくたびに結構な人たちが通ります。
時間帯によっては、お子様連れのお客様が「パンや焼き菓子」をお買い上げになることも多く、完売商品も出ているようでした。
が、さをりはどうかというと、思うほど売れてはいません。
こんなにかわいいのにー!
お店番をしているのも、各事業所に通う人たちで、休日返上でお仕事に励んでいらっしゃいました。
上の写真右の彼女は、さをりを製品に縫い上げるところまで担当されているのだそうです。
すごい!
手芸作品は、作業工程も多いし、出来上がりをイメージしながら、今自分が何の作業をしているのかがわかっていないと、完成に至らないので、障害をもつ方には難しいのではないかと勝手に思っていました。
「私にできないことは、彼女たちにできるはずがない」くらいの傲慢な考えを持っていたのです。
こういう「決めつけ」が、差別を生むって知っていたはずなのに。
「障害があろうがなかろうが、人の能力は千差万別。私ができないことでも、彼らにできることはいくらでもある」
と、改めて認識したのでした。
福祉のマルシェ後日談
この「福祉のマルシェ」をちょっとだけ応援に行ったことが、事業所の先生からSさんのお母さまに伝わったようで、
「お礼させて」
とランチのお誘いをいただきました。
福井は、おそばが美味しいところなのです。
駅前の人気店で、天ぷらそばをごちそうになりました。
その時にSさんのお母さまが言っていらっしゃったのですが、対面販売にはどうしても限界があるのだそうです。
「敦賀は小さい町やろ?人もみんな優しいから、さをりを買うてくれる人も多いのよ。でも、高齢の年金暮らしやったり、コロナで景気が悪なったりで、みんな、必要なもの以外には渋いねん。私の知り合いは、みんな、さをりの小物を何かしら買うてくれてるで。でも、二つ目、三つ目は、買うてまで要らんねん。『くれるならもろとくけど』ってことやな。買ってくれそうな人たちには、もう、さをりが行きわたってしまってるねん」
なるほど。
だったら、全国展開に望みをかけて、例えば、障害を持った人たちが作った商品のセレクトショップ『マジェルカ』に販売を委託してみるとか、自前でECサイトを構えるとかは、どうなんでしょう?
「どこも人手が足りんのよ。通所してくる人たちのお世話したり、仕事を教えたり、引率したりで手いっぱいで、そういう事務作業まで手が回らんのやと思うわ」
そうなんですね。
私はECサイトを自前で用意できれば、商品出荷までの作業、例えば、梱包や宛名シール貼りなどの仕事が増えるので、それも喜ばれるのではないかと想像していました。
が、実際は、梱包も、宛名シール貼りも、指導員さんがつききりで、新しい仕事を教えなくてはならないわけで、「仕事が増える」のは、指導員さんも一緒。通所してくる方のメリットだけ、というわけではなさそうです。
でもそれは、逆に言えば、事務作業だけを引き受ける人がいれば何とかなるってこと。
もう、こうなったら、
「ボランティアで私が事務作業を引き受けます。だから、『マジェルカ』やほぼ日の『生活のたのしみ展』に出品してみませんか?」
と提案したい欲求に駆られている今なのであります。
もちろん、施設の先生方に確認するまでは、勝手に動けませんが。
不況の波を最初にかぶるのは、小さな町工場や、こういった施設です。
どうすれば、ふらとぴの理念である「Make Everyone Happy」が実現できるのでしょう。
考えても考えても、答えが見つかりません。
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追記:この原稿を書いた翌日、マジェルカの吉祥寺にある実店舗が11月で閉店するという告知が出ました。
途上国で学校にも行けずに農園で働かされる子どもたちを救うため、コーヒーやチョコレート等を適正価格で取引しようという「フェアトレード」の概念は、国内でも浸透しつつあり、その言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。けれども、福祉作業所で障害を持つ人たちが時間をかけて作った製品を、正当な対価で売買すべきという議論は、寡聞にして聞いたことがありません。
その先駆けとして「ウェルフェアトレード」を提唱したマジェルカの功績はとても大きかったと思います。ECサイトは継続されるようですが、いつかまた実店舗にも戻ってきてほしいです。
(画像はマジェルカの通販で購入した、革製カード入れ。ピンクがかわいい)
ぢーこ運営ECサイト:コースタ814
コースタ814は、もともと仕入れている数が少ないので、月末が近づくと、在庫がないことがよくあります。申し訳ありませんが、そんな時は布を見るだけでお楽しみください。