【僕の感想】第5回:映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」

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ネタバレあり感想

今作のドラゴンクエストにおけるドラゴンは「好きを否定する者」だった

誰しも「好きなモノ」ってあると思うんですよ。
本作の主人公に関してはそれがドラクエ5だった。

いや、わかりますよ。「本当にドラクエ5が好きなヤツが幼少期スキップなんかするか?」とか「本当にドラクエ5が好きなヤツが鳥山明氏のデザインじゃないドラクエをプレイするか?」とか、熱狂的なドラクエ5ファンからそういう指摘が入るのは、まぁ、当然かもしれません。

でもですね、何かに対する「好き」の熱量とか表現とか表し方とかって、千差万別で良いと思うんですよ。今作の主人公の「好き」は「VR版のドラクエ5でも好き」だったわけです。

で、他人の「好き」って、多くの人にとっては理解できないモノです。
しかも、即物的なメリットとしては「好き」を追及したところで特に得られるモノは無かったりもします。だから、その「好き」を無条件に受け入れる事が難しく、簡単に否定的なセリフを吐いちゃったりするんですよね。

いわく「そんな事をして何になるの?」「まだそんなことしてるの?」「他の人はそんな事に熱中してないよ」とか…で、その最たるものが【大人になれよ】ですよ。

もうね、人が好きなモノに熱中している時にね、こんなセリフを言われたらね、そりゃーもう、怒髪天ですよ。ハッキリ言って人格の否定ですよ、これは。

こっちは「好きなモノを好きなだけ味わうこと」自体が目的であって、そこから副次的な効果なんて得ようとしていないんですよ。わかりますか? 人は「好きなモノから得られた感動」を目的に生きられるし、それを糧に生き続ける事だって出来るんですよ。「好きを味わうこと」こそが生きる目的であり、そのために僕達は生きているんだ。それをなに? 「大人になれ」だと? お前こそ大人になれってんだ。人の生きる意味を否定してくるな。

…と本作のドラゴンはミルドラースのコードに擬態して「何か好きなモノがある人」の神経を思いっきり逆なでしてきます。「ドラクエの映画」に足を運ぶ様な観客は「ドラクエが好き」な層が多い事でしょう。要は本作のミルドラースは多くの「ドラクエが好き」な観客の神経を思いっきり逆なでしてくるわけです。本作の評価が壊滅的になってしまっている理由の多くは、そこにあるんじゃないかな…と個人的には思っています。

僕自身もマジで嫌でしたもん、あの展開。
特に前ページでも「ビアンカが良すぎる」と言っている様に、僕はかなり本作の物語に没入していました。ビアンカ以外にもリュカの息子(アルス)も良かったですし…。だから、マジで彼らのテクスチャがはがれていくシーンはホントに声が出そうなくらい嫌でしたよ。「ちょ、それは、おい、やっちゃダメだろ…」と思いました。

しかも、この展開、まったく新しくも無いですもんね。
本作を鑑賞した人の中には「スターオーシャン3」でまったく同じ絶望感を味わった人も多くいるのではないでしょうか。僕もその口です。

ただですね、本作と「スターオーシャン3」には明確な違いがあるんですよ。
「スターオーシャン3」では、結局、主人公たちの世界は主人公たちごと消滅してしまいます。
しかしながら「我思う故に我あり」の思想を反転したような「我思えば我消滅せず」みたいな理屈で謎の世界に主人公たちは存在し続ける…みたいな展開になります。これは僕にはサッパリ意味がわかりませんでした。

一方、本作の世界は消滅しません。
ここはストーリー展開としては極めてご都合主義的だとは思うのですが、冒険の序盤から主人公に付き従っていたスライムのスラりんがアンチウイルスプログラムだった…という事で主人公はミルドラースに擬態した悪性プログラムを退治します。それによりVR版のドラクエ5の世界は守られる。大事な点は「この世界が全て作り物である事を認識したうえで、それでも主人公は世界を守ろうとする。何故ならば、この世界で生きた彼の人生は本物だから」という点です。

そうなんですよ、「好きだから遊んだ」という気持ちは本物なわけですよ。
その対象がフィクションであるか、そうではないかは大きな問題ではありません。
そもそも、フィクションの世界だって、その裏には膨大な数の作り手という存在がいるわけで、フィクションの世界を楽しむとき、人は、作り手から愛を受け取っているのです。

そこには間違いなく心の交流があり、その事自体が、生きる意味にだってなり得る。
本作の制作陣は、おそらくこれを本作のテーマにしています。
だからこそ、本作の上映時間のほとんどを観客が熱中できるクオリティの作品として作り上げ、それをあえて悪役に壊させ、主人公に悪役を倒させるという展開を選んだのだと思うのです。

制作陣は、おそらく観客の「ドラクエが好きという気持ち」ひいては「フィクションが好きという気持ち」を全肯定しています。仮にそれが伝わらなかったとするならば、それは確かに残念な事ですが…きっと、作品を冒涜する意図とかはなかったんじゃないのかな…と僕は思っています。

というわけで、結論として、僕はこの作品、好きです。
どれだけ好きかというと、思わず淡路島にあるドラクエのモニュメントまで写真を撮りに行ってしまうくらい。

DQモニュメント
ドラクエのモニュメントとチョッピー

それになんと言っても本作はビアンカが最高だし。
「結局、それかい」というツッコミを受けつつ…本記事を終わりにしたいと思います。

おまけ

最後に、本作のテーマと繋がるところがある気がする曲の動画をおまけとして貼り付けます。
「ゴールデンボンバー/ガガガガガガガ」です。是非、聴いてみて下さい。

涙なしには聴けない名曲です

以上です。

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