【今日の山頭火さん】第70回:6月13日の山頭火さん

今日の山頭火さん アイキャッチ画像今日の山頭火さん
June 13,2024 #70 89 years ago ぬけるだけはぬけてしまうて歯のない初夏
『今日の山頭火さん』第70回で利用する画像です
6月13日の山頭火さん

山頭火さん、梅雨の時期を其中庵で過ごしています。

ぬけるだけはぬけてしまうて歯のない初夏

山頭火さんの日記には、過去にも何度か、歯が抜けたという記述があります。

この後も、亡くなる年まで、歯に関する句や日記の記述がありますから、最後はほとんど失っていたんじゃないでしょうか。

ずいぶん昔の話ですが、私も今頃の季節に、歯を失ったことがあります。

私の場合は自然に抜けたわけではなく、親知らずを歯科医院で抜いてもらいました。

歯が抜けると、歯茎にぽっかり穴が空いて、なんか気味が悪いんですよね。

ずっと気になり、舌でそのぬるっとする場所に、触れ続けていました。

あと、なんともいえない、気分のもやもやが起こります。

ちょっと血の味もしますしね。

歯を抜いた後の、口の中。

なにか熱がこもっているような、もわっとしたした、重い感じがします。

今考えると、ただ炎症を起こしているだけなんでしょうがね。

なぜ、今頃の季節だったと憶えているかというと、その気味悪い感触やら、重い感じを鎮めるには、アイスクリームだと思って、アイスを探したからで、アイスにたどりつくまで、結構、時間がかかったせいです。

別に、人里離れた山の中にある歯科医院で歯を抜いた訳ではありません。

当時は、今のようにコンビニがありませんから、年中いつでもどこでも、アイスが食べられるというわけではありませんでした。

駄菓子屋や小さなお店の前には、冷凍ショーケースが置かれています。

そこに被していた覆いを外して、アイスを置くようになるのが、今頃の季節からでした。

ゴールデンウイークあたりから梅雨にかけてですかね。

アイスクリームは、いまよりずっと季節感がある食べ物でした。

アイスクリーム、というより、アイスキャンディーですね、その時食べたのは。

氷菓に区別される、棒についた、アイスです。

そのソーダ味で、口の中の熱や、もやもやした気分がスッキリしたのか、初夏の爽やかな青空に気分が晴れたのか。

帰りには鼻歌のひとつも歌っていた気がします。

山頭火さんも、梅雨の合間、初夏の青空の下、歯は抜けたものの、案外スッキリしていたのかもしれませんね。

なにか失いましたか、そうですか。

空は青いからソーダ味ですかね、ちがいますか。

空の青さが目に沁みますか、そうですか。

タイトルとURLをコピーしました