今日の山頭火さん、延岡から汽車で内陸の重岡へ、そこから歩いて三国峠を越え三重町まで来ています。
今日の句、『行乞記』の記載では括弧旧作としてあります。
しぐるゝや道は一すぢ(旧作)
山頭火さん、この旅に出るにあたり、過去の日記をすべて燃やしてから、出発したといわれています。
すっぱり、過去を精算したはずです‥‥
思い入れある昔の句、捨てきれなかったのか。
しかし、なんで今思い出したかな、時雨の句。
『行乞記』によると、昨日も今日も晴れてますよ、天気悪い日なら解るんだけど。
四日前に延岡で留置郵便を受け取った際の記載に、
『彼女からの小包も受け取った、さつそく袷に着替へる、人の心のあたゝかさが身にしみこむ』
とあります。
秋も深まり、寒くなってきたんですね山頭火さん。これから峠越え、単衣じゃ冷えるものね。
じゃなくて、彼女って誰よ、捨ててきた奥さんの咲野さんじゃないのか。
元奥さんに冬用の着物を送ってもらい、差出人の咲野と書かれた名前とか、
見慣れた文字を見たんですかね。
それで、すっかり感傷的になりましたか、晴れているのに、しぐれた気分になりましたか、思い出とともに、昔の句も蘇りましたか。そうですか。