こんにちは。ふらとぴ編集部チョッピーです。
前回のふりかえり
完全に対談と化した本企画! 『ひろのぶと株式会社』が目指すところ、成功のための方法論についての考え方、様々なお話が泰延さんとチョッピーの間に飛び交った! 全然、インタビューじゃないけど、これはこれでいいのではないだろうか?
前回の記事はこちら↓
ひろのぶと株式会社
会社は協力者がいないと始まらない
チョッピー:僕、自分に起業家としてスゴいウィークポイントがあると思っていて。
田中泰延:ふんふんふんふん。
チョッピー:基本的に自分の親族以外の他人っていうのは、自分のやりたい事とか、気持ちとかには興味がない…という事をスゴく思ってるんですね。
田中泰延:うん。
チョッピー:人がやって欲しいことをやるからこそ、価値が出てくると思ってるんですよ。
田中泰延:ふんふんふん。
チョッピー:ただ、起業した理由としては僕自身の「社会をこう変えたい」という…「僕の気持ち」という側面が強いんですよ。
田中泰延:ふんふんふん。
チョッピー:そこで、新規事業を興す場合の流行りのやり方だと…ベンチャーキャピタル等々から巨額の投資を頂いてやっていくってのが、まぁ、スタートアップとしては定石だと思うんですけど。僕、どうも、そのやり方は出来ない気がしてならなくて。
田中泰延:ほぉほぉほぉ。
チョッピー:なんでかっていうと、その…自分の中に「自分のやりたいことは、他人にとってそんなに価値がある事ではない」っていう気持ちがあるので。こう、自分のやりたいことを熱意をもって説明して、人からの共感が得られるっていうのが、イマイチ信じられないところがあるんですよ。
田中泰延:ほー。
チョッピー:僕はそんな懸念を抱えながらも起業してしまったんですけど。泰延さん的には、あの…どう思われますか?
田中泰延:あのー…この間のOIC創業祭での出口さんの話をすると、出口さんは、あそこでハッキリおっしゃっておられたけど「保険料を半分にすれば、若い人が子供を持つ、持てる、そんな家庭を作れる。賛同する人はお金を僕に預けてください。こう言ったら100億円集まった」って言ってましたね。
OIC創業祭:立命館大学主催のイベント。チョッピーと泰延さんはこちらで初対面。詳細は本連載第1回を参照ください。
チョッピー:言われてましたね。
田中泰延:つまり会社って本来そういうもんであって。今、チョッピーさんが言われている生き方はフリーランスの個人事業主の生き方なんじゃないかな。
チョッピー:はぁー…。
田中泰延:つまり一匹狼の仕事引受人のスタンスですよ。僕も、大体としてはそう思ってますよ。
僕の書く原稿は僕にしか書けない。それが印刷なりネットに載るなりして皆に届くまでは、結局、内容が面白いか面白くないかもわかんない。だから僕はお金をもらって原稿を書くけど、その結果は書いてる時にはわかんないし、事前に賛同してもらう事も出来ない。
チョッピー:はい。
田中泰延:ところが、会社をやるときは、こういう風に印税2割・3割・4割・5割…っていう志を掲げて。「書く人を増やしたいし、書いた人への収入も増やしたい。そのスタイルで社会を変えるってどう?」って人に言って。これが会社の考え方で。会社っていうのは最初っからCompany、つまり「協力者」「仲間」っていう意味だから。
チョッピー:はー。
田中泰延:『Tiffany & Co』っちゅう、あれでもそうや。Tiffanyさんと協力者。『MAX&Co』っていう会社もあるでしょ? Maxさんと仲間。
チョッピー:なるほど…。
田中泰延:僕の会社は和文表記が『ひろのぶと株式会社』っていうんですよ。「ひろのぶと」までがひらがなで社名。で、後ろに株式会社。だから『ひろのぶと株式会社』。『Hironobu & Co』なんですよ。
チョッピー:はー。
田中泰延:つまり、株式会社っていうのは個人商店でも個人事業主でもないから。実は、協力者がないと始まらない。金を出す人があってはじめて株式会社。
チョッピー:うーん。
田中泰延:で、大事なのはもうひとつあって…。チョッピーさんのところは、これ、何会社?
チョッピー:一応、株式会社でやってます。
田中泰延:株式会社って株を売って資金調達できるでしょ?
チョッピー:そうですね、はい。
田中泰延:それは、みんながチョッピーさんの会社の価値を決めてくれるという事なんですよ。つまり、もしチョッピーさんの会社の株の10%を500万で売り出して売れたとします。90%は自分で持ってね。その場合、10%の株が500万で売れた会社の時価総額は5000万円なんです。1000万円で売れたら、なんと1億円だし。つまり、みんながチョッピーさんや僕の器を決めるって事なんですよ。
チョッピー:器…。なるほど…。
田中泰延:そんときに大事なのは出口さんの言われた、志と小学生の計算。で、志っていうのは、実はやっぱり公開すべきで。その公開した志に対して「お金を下さい。はい10万円。はい20万円。うんOK、OK、50万、OKいいね」って、そういう話だと思うんですよね。
チョッピー:そうですね…。そっか…。
田中泰延:うん。だから、チョッピーさんわかるけど。俺も「退職金が減っていく、やばい、家族どうすんの」とか、あるよ。あったけど、それは…。僕は青年失業家だったじゃないですか。
チョッピー:はい。
田中泰延:だったけど、切り替えなくちゃいけないと思って。
チョッピー:うーん、やっぱそうですね。
田中泰延:うん。つまり会社を…「株式会社始めまーす」って言った瞬間、自分は社会の器になる。大きいのか小さいのかはみんなが決めるけど。チャリーンとお金を入れる箱になるはず。
チョッピー:そうですね。そう、今、私もあの、そこをすごい悩んでる…悩んでるっていう表現が適切かはわからないですけど、切り替えなきゃなーという気持ちがすごいあって。なので、こう、なんだろうな、自分じゃないんだよな。なんか自分が目指してる志を、こう、広く周知していって、協力者を集めるっていうスタンスにするべきなんですよね。
田中泰延:うん。
チョッピー:うーん…。
田中泰延:だって、社会の解決したいと思うことを掲げて、お金をもらう。これは、会社を始める人も選挙に立候補する人もみな同じじゃないですか。
チョッピー:そうですね。
田中泰延:うん。で、えーっと、この間、俺いいケースになったと思うんですよ、あの、YouTube。
チョッピー:YouTube、はい。
田中泰延:あれ、「みんな悩みあると思うから悩み相談してくれ。その番組を見たかったらお金送ってくれ」って前田将多君が言ったら、50万ぐらい集まったんですよね、2日で。
ということは、みんなに「お金をくれ」って言って、それを受け取って使うことは全く後ろめたいことではないということが判明したんですよ。志が発表されたら払いたいし、みんな。
チョッピー:うーん、なるほど。
田中泰延:うん。
チョッピー:…そうですね。
田中泰延:うん。
チョッピー:今、私がやってる会社は…本当にその、自己資本しかない、本当の意味で「自分の金」しか入っていないので…。あの、そう、だから、これから、その、事業をスケールさせるためにも…結局「こういう風に社会を変えたい」とか言ってても規模が大きくならないと絶対変わらないので。そこをだから変えていかなきゃな、っていう気持ちはあるんですが…。なるほど。
田中泰延:でね、チョッピーさんがやってる、その毎日更新してることも。もし「こういう夢があるから5万ずつでもちょうだい」って言って本当にお金をくれる人が100人いたとしますよね。今は「あー誰も読んでくれねえなぁ」ってなってても、その100人って5万円払ったんだから、それ、必死で読みますよね。
チョッピー:そうですね…。
田中泰延:ていうことは、ファンを金で買うんではなくファンから金をもらうんですよ。そういうことなんですよ。
チョッピー:ですね。
田中泰延:うん。
チョッピー:…勉強になります。
田中泰延:いや、俺、最近これ思ったの。ついに発想が転換したの。
チョッピー:はー。
田中泰延:でなければ世の中にこんなに会社があったり、あと、議員とかがいるわけないと思う。
チョッピー:なるほど。
田中泰延:うん。
みんな儲かるのが商売
チョッピー:いつぐらいから会社を作ろうと思われてたんですか?
田中泰延:会社は、もう電通辞めた時から作ろうと思ってた。フリーランスの物書きじゃ、ただ、ものすごく物思いにふけっていって人生が終わるとずっと思ってたから。それは作ろうと思ったの。それに周りに書く人たちがいるから「この人たちは紙の本が絶対いいな」と思ってたわけですよ。
チョッピー:はー。
田中泰延:でもそんな心配しなくても、燃え殻さんや鴨さんやみんな、メジャーな出版社からどんどん出してるわけですよ。
チョッピー:あははははは、そうですね。
田中泰延:うん。だからそういう「あ、最初からプロの人たちだったんだ」と思って。
チョッピー:あー、なるほど。
田中泰延:でも、今から燃え殻や鴨になれる人がいるわけじゃないですか。
チョッピー:はー、そういう方々を生みだしていけるような会社をって事ですか。
田中泰延:まぁ、生み出すというよりも「新潮社や講談社より先にとってやれ、とってやりたいな」という。
チョッピー:はいはいはいはい。
田中泰延:あ、こいつ儲かるっていう。
チョッピー:はいはいはいはい(笑)
田中泰延:「こいつ儲かる」って大事ですよ。俺、ザッパラスっていう会社を作った玉置っていうね、同級生の社長からすっごい大事なこと言われたんだけど。「ビジネスの基本って田中くんわかる?」って。「私も儲かる、あんたも儲かるやで」って。
チョッピー:うんうんうんうんうん。
田中泰延:うん。「私が儲かってあんたが損をするとか、あんたが儲かって私が損をするとか、誰がそんな商売する? 私も儲かる。あんたも儲かる。だから商売って成り立つんやで」って言われて、そうやなーと思って。
チョッピー:うん。そうですよね。
田中泰延:ゼロサムゲームじゃないんですから。両方が儲かるのが商売なんですよ。
チョッピー:うん…なるほど…。結局、関係者全員が Win – Win になれる状態のビジネスを作り上げるのが一番大事ですよね。
田中泰延:うん。だから、チョッピーさんも「株式会社」としてやっていく。「社会に対してこう変えたい」と思うのがあるんだったら、むしろ記事の内容は「金をよこせ」っていうのでいいんじゃない? 毎日、毎日。
チョッピー:あはははは、そうですね、確かに。「こんないいことをやってるんだから、金を払えよ」っていう。
田中泰延:そうそうそう。事業をやる人にとって「金をください」っていうのは、政治家が「私に一票をお願いします」と全く一緒やからね。
チョッピー:うーん。
田中泰延:何ら恥ずべきことじゃなく。借りてるんじゃないもんね。
チョッピー:そうですね。
田中泰延:うん。で、これから伸びる良い会社があるんやったら金を出す方も出したいじゃないですか。儲かるんだから。俺だって出したい。
チョッピー:うんうんうん。
田中泰延:『読みたいことを、書けばいい。』でも書いたけど、21年前の1999年にAmazonの株を100万円買ってれば、今、1億円超えてるっていうね。
チョッピー:そうですね。それが本当、正しい姿ですよね。そういう風にできれば一番望ましい。
田中泰延:そう。個人事業主があって、個人商店的な会社があって、で、株式会社があるじゃないですか。
チョッピー:はい。
田中泰延:「どっかからお金を借りて、それをどう返済するか」ていう考え方、これは僕、古いと思うねん。信用金庫で1000万借りて、利息が付いて、それを返済するために火の車的に商売がんばるっていうね。実はそれって株式会社の本来の姿でもないしね。
チョッピー:うーん。
田中泰延:商店の考え方や。
チョッピー:融資よりも投資でお金を集めて、それで、みんな儲けさせるよっていう形の方があるべき姿?
田中泰延:そう。そして、みんなにちゃんと「夢に賛同してもらうから株式買ってもらうんであって、僕の夢がみなさんと一緒に敗れたら、これ紙くずですけどいいですか?」っていうのも責任じゃないですか?
チョッピー:なるほど。
田中泰延:うん。
経営者と株主は対等
チョッピー:それについて、若干、僕がアレルギー的になってる部分があるんですけど。株式発行して誰かに株主になってもらう。そうすると経営者自身が「株主のために働く」っていう風になってしまう可能性がありそうな気がしていて。
僕自身、前職でシステムエンジニアとして11年間働いてたんですけども、システムエンジニアってかなりブラックな面があるお仕事で。残業時間100時間超えが18ヶ月連続で続いたとか、転勤初日の帰宅時間が24時を超えていた…みたいな経験があって。「このまま人のために働いてると死んじゃうな」っていう気持ちがすごいあってですね。そこで株式を誰かに売るという行為に、こう、若干、二の足を踏むところもあるんですけど。「せっかく独立したのに」みたいな。
田中泰延:株主はCompanyだから上下関係じゃなくて仲間だよ。もっと言うと、チョッピーさんや僕がやろうとしてる障害者の就労支援をするとか、本を出すとかっていう会社の株主になる人って、ファンじゃないですか? 僕らはファンベースを作ろうとしてるんですよ、ファンベース。
チョッピー:あー…なるほど。
田中泰延:うん。だから、チョッピーさんの会社の株主になった人はチョッピーさんが毎日書いてるヤツを読んで「あ、今日も元気に活動してるな」ってなるだけで、毎日、元がとれるわけですよ。
チョッピー:うーん。
田中泰延:そのうえでビジネスが大きくなって、配当が5万円に対して年1000円来たとしたら。それってデカくない?っていう嬉しさもあるよね。
チョッピー:なるほど。…少し話が変わってしまいますが、泰延さんって会社辞められて、フリーライター…いや、青年失業家として3年やられて。
田中泰延:うん。
チョッピー:「仲間を作って、株式会社でやっていくぞ」っていう考えに至ったきっかけみたいなのってあるんですか?
田中泰延:もともと「会社っていうのはそういうものだ」っていう考えはあったんですよ。ただ一個、僕にすごく勇気を与えたのは、ほぼ日の上場ですね。
チョッピー:はー。
田中泰延:会社創立20年でついに上場したんですよ。で、株主総会を見に行ったんですよ、最初の。
チョッピー:どうでしたか?
田中泰延:ただのファンミーティングでしたよね。
チョッピー:あはははは。
田中泰延:だから、投資家からしたら批判もされてるんですよ。「糸井重里のファンクラブやないか」「そんな株を持ってどうすんだ」とかね。
チョッピー:うーん。
田中泰延:でも、そうじゃない。Companyだから。
チョッピー:うんうんうん、そうですね。
田中泰延:うん。でも、ちゃんと配当あるんだよ、ほぼ日も。それに株主総会行ったらお土産もらえるし、行けなくたって家にお土産届くから。それが偉い。
チョッピー:それによって会社と株主を対等な関係…「お金だけ出してもらう」とか「俺のために働け」とかじゃなくて、仲間…Companyにしているのかもですね。
田中泰延:うん。
チョッピー:やっぱそういう…貸し借りのない関係っていうか。配当を出してる時点で「糸井重里のファンクラブじゃないか」っていう意見は的外れかなと僕は思います。
田中泰延:俺、最近流行りのオンラインサロンとか、ちょっとどうかな…と思うんですよね。
チョッピー:というのは?
田中泰延:つまり、結局、それって「あなたは私のファンですよね? 特になんもないけどお金もらっちゃいますよ」っていう感じじゃない? まあ、あるんだろうけど、それぞれリターンがね。
でもオンラインサロンだと資産としての株券は残らないし。配当金もないし。なんか変だと思った、僕は。
チョッピー:そうですね、確かに。株券とか配当金という形での見返りがない形でのビジネスプランだと、やっぱり持続可能性がないと思うんですよ。OIC創業祭の時に出口さんも「ソーシャルビジネスでも見返りの無い形でのビジネスモデルだと続かない」と言われてましたけど。
田中泰延:うんうんうん。
チョッピー:お客さんも見返りがないと、いつまでも自分のお金を出し続けられないじゃないですか。何かがないと。やっぱ Win – Win の関係で対等にするのが大事ですよね。
田中泰延:そうなんですよ。株券って対等でしょ? そして、それに配当出すのも対等だから。業績良くなくて配当が出ないことも含めて対等やからね。
チョッピー:うん、そうですね。
田中泰延:それはお金を出した人の責任もあるから。
チョッピー:そうですね。そこは「あなたも自分が儲けられると思って私に投資したんですよね?」っていう世界ですもんね。
田中泰延:そう。
チョッピー:そう思います。
自分のやりたいことをやっている時点で幸せ
チョッピー:泰延さん、昨日(3月17日)から社長じゃないですか。僕も一人会社ですけど、一応、社長で。そうなると周りの人から「独立してすごいね」とたまに言われる事があって。馬鹿にされてるのかもしれませんけど。
田中泰延:うんうん。
チョッピー:実際どう思われます? こういう生き方。これ、推奨されますか? 泰延さんは。
田中泰延:…。
田中泰延:しないですよ。
チョッピー:あー、しないですか、やっぱり。
田中泰延:うん。会社勤めて最後まで勤め上げるのが、そりゃあ、一番いいですよ。
チョッピー:そうですよね。やっぱ毎月、安定した給与が入ってくるのがどんだけ幸せかっていうのが本当にありますね(笑)
田中泰延:うん。別にこの生活がいいわけじゃなくて、前の生活が嫌だから辞めたんだからね。
チョッピー:そうですよね。それと少し繋がっている気がするんですが、僕、『読みたいことを、書けばいい。』を読んで「迎合して生きるな」みたいなことを言われているのかなと思ったんですね。「自分が求めてるものをやり続ければ、いつか社会もそれを認めてくれるはずだ」みたいな。泰延さん的にはこの感想はどう思われます?
田中泰延:あー、前半賛成、後半はそんなの決められないんじゃない?ってとこかな。自分がやりたいことはやったらいいけど、それがいつか社会に認められると思って生きてて、結局、認められなかったらしんどい。そんな野望は抱かなくていいんじゃない?
チョッピー:なるほど。
田中泰延:自分のやりたいことやってる時点でもう幸せじゃないスかね。これが、あの本の言いたいことじゃないかな。じゃなかったらさ、やっぱり成功しなかった人はみじめに死ぬって事になっちゃう。そんなことないよね。
チョッピー:うんうんうんうんうん。そうですね。
次回予告
会社はCompany ! 株主と経営者は対等! 自分のやりたいことをやっている時点で、もう、幸せ! インタビューのつもりで始まった対談はいよいよ佳境へ! 泰延さんの体現する生き方とは…!? この対談はチョッピーに何をもたらすのか!?
次回、本編最終回「気合の入ったことをやって生きていきたい」! お楽しみに!