山頭火さん、唐津から山間部に入り莇原と言うところに来ています。
この日、一月二十七日に詠んだ句は、
山路きて独りごというてゐた
独り言は、どこからくるのでしょうかねぇ。
心から? 頭の中から? 過去から? 未来から? あるいは風が運んでくる?
この日の行乞記にはこんな記述もあります。
『沿道を行乞しながら東へ向かう、雨はやんだが風がでた、笠を吹きとばすほどである』
網代笠を真深く被り、向かい風の中歩みを進める山頭火さん。
冬の季節風が終わり、春を告げる東向きの風、東風が吹き始めたようです。
この日お昼は饅頭ひとつだったとの記述もあります。
きっとお腹空かしながら、春に向かって歩いているんですね。春がなかなか来ないなら、こっちから行けばいいんですね、きっと。
独り言ですか、そうですか。なんと呟きましたか、喜びの言葉ですか、嘆きですか、
山頭火さんと風だけが知っているんですね、そうですか。