山頭火さん、其中庵で残暑です。
家をめぐる青田風よう出来てゐる
昔は、私の実家の近くにも、沢山田んぼがありました。
今はそこに住宅やらマンションが建ち、田んぼはほとんどありません。
幼いころ、家の中にいても聞こえてきた、カエルの鳴き声は、まったく無くなりました。
実家へ戻った際、暑い中、というか熱い中と書いた方がいいぐらいですが、田んぼはどうなっているかなと、一画だけ残っている場所へ見に行ってきました。
田んぼの前に立って見ると、スズメよけのネットが張られていたり、背景が夏空では無く、建物だったりして、記憶の中の田んぼとは、雰囲気が随分変わっていました。
農薬等の影響でしょうか、カエルの姿も見当たりません。
ここでさらに、ちょっと別の違和感がありました。
この山頭火さんの句を、声に出して読みながら、田んぼを見る。
これを、青田って詠むかね。
確かに稲の葉は、まだ青かったのですが、実がついており、穂先は下がってきています。
青田と呼ぶのとはちょっと違う様子でした。
調べてみました。
地域や品種によっても田植えの時期は異なるので、一概には言えないのですが、昭和20年代以前の田植えの時期は、概ね今より一ヶ月ばかり後だったようなのです。
山頭火さんが、この句を詠んだのは、昭和七年です。
だとすれば、この時期、山頭火さんの家の周りが青田であっても、納得です。
青田風も吹きますな。
古くから続く作物の栽培など、ずっと同じ時期の風物詩だと思ってました。
今、当たり前だと思っている景色が、ほんの90年あまりで、ずいぶん変わるもんだなと。郷愁まっしぐらです。
山頭火さんの日記を読んでいると、ちょいちょいこうした出来事に出くわすのが、おもしろいです。
これから、温暖化がさらに進めば、もっと色々変わっていくのでしょう。
近所の田んぼも、そのうちバナナ畑になるかもです。
カエルの代わりに、ワニが出てくるかもしれません。
それはそれで、熱川バナナワニ園みたいで、嫌いじゃないですけどね。
変わらないものなどありませんか、そうですか。
パンタレイですか、そうですか。